自分に合った漢方薬は症状を当てはめずにストーリーで考えて選ぶ
漢方薬を体質に合わせて選ぶということは、皆さんご存知ですが、実は病院で漢方薬を処方している医者も間違っているし、ネットや漢方の本ですら(一部を除く)漢方薬の説明は間違っています。
ネットで漢方薬を調べてみると、漢方薬の効能効果のところに、いろいろな症状が書いてあります。
多分、自分で漢方薬を選ぼうとする人は、この症状が自分に当てはまるかを考えるのだと思います。
例えば、ツムラの当帰芍薬散の場合、
ツムラ 薬のしおり 当帰芍薬散23番より引用
この薬の作用と効果について
この薬は漢方薬です。あなたの症状や体質に合わせて処方してあります。 貧血、倦怠感、更年期障害、月経不順、月経痛、どうき、妊娠中の諸症状の治療に使用されます。 通常、筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすい人に用いられます。
タイトルに『この薬の作用と効果について』と書いてありますが、読み進めていくと、いろいろな症状が書いてあって、最後に『〜どうき、妊娠中の諸症状の治療に使用されます』と書いてあり、よくよく読んでみると、作用や効果ではなく、「こんな感じの症状を持っている人に使います」とだけ書いてあるのです。
普通、効果や作用というのは、『血管を拡張する』とか『痛みの物質を遮断して、痛みを止める』というものです。
頭痛の痛みを止める効果や作用が『頭痛の人に使用されます』とだけ言われてもそれは効果じゃないのですよね。
これでは1mmも当帰芍薬散の効果や作用の説明になっていません。
漢方薬の効果の説明は、そんな意味不明なことが当たり前になっています。
詳しくは「漢方薬の「効能効果」の説明を参考にしても意味がない!?」を読んでみてください。
漢方薬は症状をあてはめて選びません!
漢方薬は本来は、全身のいろいろな症状を材料にして体質を考えていきますが、この時に勘違いしてしまうのは、『ある症状があるか?ないか?』だけで考えてしまうことです。
症状があてはまるかどうかが効果だと誤解されていますが、症状が当てはまっても効果があるかどうかとは何も関係がありません。
先日、あるうちの患者さんが、微熱がある感じで、のぼせも強いが、体温を測ったら体温が低く、胃の状態もよくないという状態がありました。
その時は、「虚熱の証」と「気の上衝の証」という原因だと判断し、体上部に上がった気を下げて、水の巡りを整える漢方薬にプラスして、補助的に体力を補い、体を温める漢方薬を合わせました。
それから1週間ほどして、また、同じような状態に陥りました。
患者さんは、「前と同じ症状なので、前と同じ漢方薬をいただけませんか?」とおしゃっられたのですが、僕は今回は違う漢方薬を処方しました。
なぜ、同じ症状なのに違う漢方薬になるのでしょうか?
病気のきっかけで選ぶ漢方薬は変わる
現在の病的な体質になるまでにはストーリーがあります。
風邪にかかったとか、菌をうつされたというのはいきなり何かの症状が発生しますが、それ以外は、その症状になるまでのストーリがあるので現在の症状だけでは診断できません。
前回の場合は、肉体的な疲れがあって「微熱感」、「のぼせ」、「胃の状態がよくない」というものがありましたが、今回は、同じ症状が起こるまでのストーリーとして、会社でのストレスがありました。
逆に肉体的な疲れはありませんでした。
つまり、結果として症状は同じなのですが、症状を発生させた原因になるものが違います。
今回は、より気の滞りが激しいところから起こっていて、あまり、温めることがよくない体質だったので、前回と今回は、症状はほとんど同じなのに飲む漢方薬は変わってくるのです。
病名をマニュアル的にあてはめているだけの病院の漢方薬では、考えられないでしょうが、漢方の診断では、こういった分析をするのは当たり前です。
漢方と西洋医学の決定的に違うのは、今、確認できる目の前の症状だけを切り取って診るのではなく、何からその症状が発生したのか?それを合わせてて考えないといけないのです。
病気に限らず、どんなことでも起こっている原因というものがあって、その原因の結果、『今の症状』が発生しているのですね。
なので、「今」だけの状況をみても意味がありません。
体質を分析するためのその人の病気のストーリー
漢方薬は病名や症状に合わせて選びません。
さっきの症状、「微熱感」、「のぼせ」、「胃の状態がよくない」は、ケースによっては風邪の初期の場合もあります。
この場合も、問診をとっていって大元を探っていき、『どうも風邪だな』と考えた場合は、また違う漢方薬を選ぶことになります。
ですので、ネットや本に書いてある漢方薬の症状をみて、漢方薬を選ぶ先生がいますが、『その時の症状』だけをみても、実は意味がないのです。
同じ人、同じ症状でも、『その症状が出るまでのストーリー』で選ぶ漢方薬次々に変わっていきます。
なぜ、漢方薬はあれほどの種類があるのかは、ここからもわかります。
「ある症状」が、あるか?ないか?ではなく、常に『どれくらい前に、どんな状況から、その症状になったのか?』
この『今の症状までにつながるストーリー』を詳しく調べないと、最適な漢方薬は選べないし、体質と合っていない漢方薬は効果がないどころか、副作用を起こすことだってあります。
自分に合った漢方薬を選ぶためには症状の発生した時期まで戻り、その時の状況も再現していかないといけないので単純に症状だけが当てはまるかどうかをみても無意味なのです。
●更年期障害や月経困難症で、お悩みの方は、こちらの「漢方無料相談」から送信してください。
●お問い合わせは、こちらから送信してください。
●店頭相談のご予約は、こちらから、ご予約ください。(店頭も初回の相談は無料です)
【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社
関連した記事
- なぜ自分で選んだ漢方薬や病院の漢方薬だと治療に失敗するのか?
- 漢方薬は病院の薬と違って合っているのかどうかも自分ではわからないこともあります。なぜ、そうなるのかの理由を具体的に説明しています。
- 病院の漢方薬の選び方はどう間違っているのか(例:大建中湯)
- 病院の漢方薬は選び方が間違いだらけ!大建中湯の処方の方法をみれば医者がいかに勘違いした間違った方法で漢方薬を選んでいるかがわかります。
- 複数の漢方薬を1度に同時に飲んでも副作用の心配はないの?
- 訴えた症状ごとに漢方薬が処方され、一度に複数の種類の漢方薬を飲まれていることがありますが漢方薬は症状を消すことを目的にしていませんので、こういった飲み方はかえって根本治療から遠ざかる場合もあります。