漢方薬相談ブログ

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漢方薬で速攻で治せる症状と治療に時間がかかる症状や病気

一般的にはみんな漢方薬のことを致命的に誤解している部分があり、『漢方薬は何かの症状をとってくれるもの』と思っています。

なんだったら始末の悪いことに治療の専門家であるはずの医者もこのヘンテコな感覚に疑問を持たず、漢方薬を処方していたりします。

そんな感覚から時々、困った質問があります。

それは…

『漢方薬が体全体を治すというのはわかっていますが、とりあえず、めまいだけを取る漢方薬はありませんか?』

とりあえず、毎日、襲ってくる一番辛い症状をとってもらいたい。

気持ちはわかります。

でも漢方薬は基本的には病院の薬と違って症状を速攻で一定時間だけ抑えるものでないので、とりあえず症状をとってもらいたいといっても難しいのです。

ただし、漢方薬は治すのにどんな症状でも時間がかかるのか?というと、そうではありません。

時間がかからず速攻で治せる症状や病気もあれば、どうしても時間をかけるしかない症状や病気もあります。

今回は漢方で速攻で治せる症状と、治療に時間がかかる症状や病気との違いや、その理由を説明したいと思います。

漢方薬は症状をとることが目的ではない

ネットで漢方薬のことを調べると、それぞれの漢方薬のところに「効能又は効果」と書いてあって、そこにいろいろな症状が書いてあります。

例えば十味敗毒湯の効能効果のところをみると「化膿性皮膚疾患、急性皮膚疾患の初期、じんましん、急性湿疹、水虫」なんて書いてあります。

こんな感じで書かれていたら誰でも、「十味敗毒湯って蕁麻疹とか湿疹を治す薬なんだ」って思いますよね。

でも、この文章、よく読んでみましょう。

実は日本語がおかしいのです。

なぜなら、単に症状や病名が並んでいるだけで、実際は効能効果のことなんて一文字も触れてません

ここで湿疹で使うステロイドを例に考えてみましょう。

ステロイドはアトピーに対応しますが、ステロイドの説明欄に湿疹とかいてあったとしましょう。

でもこれだけでは、なんとなく「ステロイドは湿疹に使うんだな」くらいしかわかりませんよね。

そこでステロイドの効能効果というのを考えてみると『効能効果は免疫を抑制して炎症を抑え、痒みを抑える』ことなのです。

当たり前の話ですが、効能効果とは『どうっやって治しているのか』という根拠です。

つまり、「十味敗毒湯→効能効果→水虫」とこれだけだと何一つ効能効果のはことは書かれていません。

なぜなら、本来の十味敗毒湯の効能効果は湿疹を抑えることではないからです。

十味敗毒湯の本当の効能効果は『表の熱証の人の皮膚表面の熱を鎮める』『表の湿証の皮膚表面の水の巡りを巡るように促す』『胸脇の熱証の熱を鎮める』『肝熱証の肝の臓の余分な熱を鎮める』とうもので、湿疹やかゆみを治すなんて一言も書かれていないいのです。

正規には、これらの原因(証)を持っている人の湿疹を十味敗毒湯の持っている効能効果を応用して治すといったものなのです。

ですので、十味敗毒湯にステロイドのような痒みを取る効果や成分なんてありません。

だから「とにかくかゆみだけをとりたい!」と思って十味敗毒湯を飲んだところで、十味敗毒湯が治せる原因のアトピーや湿疹でなければ、驚くほど効きません!

漢方薬の「症状の考え方」

「気になっている症状を一刻も早く取りたい!」

病院の薬は速攻で1つの症状を取ってくれますが、実はあれって治療しているんじゃなくて症状をごまかして治すのを先延ばしにしているだけなんです。

例えば、雨の前の日に頭痛に見舞われる人は、水の巡りが悪く、その水の巡りは胃や腸の消化器機能が原因だったり、ホルモンが原因だったりと、いろいろな原因があり、同じ水の巡りを治すのも他に加わる条件によって選ぶ漢方薬も変わります。

こういった体質の人の場合、体内の水の巡りが徐々に整っていったり、ホルモンバランスが整ってくるにしたがって、頭痛も徐々にマシになってきます。

ところが、病院の薬の場合は、痛みを発する酵素自体の働きの邪魔をして、うまく働けなくして痛みが発生しなようにします。

まさに『原因そっちのけで症状をごまかしているだけ』

本来の原因はほったらかしなので、鎮痛剤を飲み続けても頭痛が根本的に治ることは科学的にも理論的にもありえません。

漢方薬は頭痛の根本の問題を考えて治療するので、速攻で頭痛の痛みだけがなくなるなんてことはないのです。

同じ頭痛でも原因は人それぞれ

先ほどのお天気頭痛の方は人によって原因が変わります。

ベースになるのは『水の巡りが悪い』というのに加え、ある人は排卵期の卵巣の水の巡りと関わっていたり、ある人は胃腸の問題と関わっていたり、腎臓の水の排出能力と関わっている人やこれらの原因が関わっている人もいたりと、お天気頭痛という症状が同じでも人それぞれ原因が変わります。

そして、病院の考えと違うところは、頭痛が起こる原因は一つではないということです。

熱のこもりが原因で、おまけに水の巡りも悪くなり、それが腎臓にも影響しているなどがあり、原因は大抵、複数の要素が絡んでいます。

なぜなら人間の体はつながっているからです。

病院の薬は頭痛の原因なんか関係なしに頭痛を発生させる物質を働けなくするだけなので、原因が複数とは考えないのです。

漢方薬の治療は症状を直接、抑えにいっているのではなく、体内の働きが調和するように整えて結果的に症状が出なくなるようにしています。

ですので、『ある症状だけを速攻で止めたい』というのは基本的にはできないのですね。

漢方の治療原則から外れます。

体内のいろいろな要素を徐々に調整するから、全体的にいろいろな症状がなくなっていくのです。

速攻で症状に効く漢方薬

水の巡りが原因だったら、水の巡りを強烈に巡らせれば治るのではないか?

はい、これは実は可能です。

例えば五苓散というのは、体の水の巡りを強烈に巡らせて排出する効果の漢方薬です。

医者が頭痛の漢方薬と勘違いして出しているものですね。

この漢方薬なら不要な水がドバーと巡ってオシッコで出されるので、スカッ!とお天気頭痛が治りそうですよね。

でも、まず、強烈な水の巡りに耐えられない体質の人がいます。

この場合は、水の巡りと排出が強烈すぎて脱水します。

漢方薬が合わなかったという時のこれが副作用です。

また、ホルモンとの関連があれば、卵巣や下腹部の水を追い出すのは五苓散では効果不足なので、いたずらに水の巡りだけが良くなると、下手すると頭痛がよけいにひどくなります。

ただ、ここで頭痛だけがスッととれるということがあります。

それは、頭痛がこの2、3日以内位に発生したもので、ホルモンやら胃腸の問題やら他の臓器や器官と関連が一切なく慢性病でない場合です。

この場合は五苓散はめっちゃ効きます。

同じように何らかの痛みがある人。

痛みが筋肉の収縮だけで起こっていて、他の要因との関連がなく症状が発生したのがこの2、3日以内であれば、芍薬甘草湯が効きます。

他にもこの2、3日以内で起こった風邪や下痢なら、その症状だけを速攻でなくすことができます。

ただし、漢方薬は常に原因に対して効くものですので、『頭痛=五苓散』で治るわけではありません。

速攻で効かせる場合でも頭痛の原因が「水の巡りなのか?」「血の巡りなのか?」「気の停滞なのか?」などと「症状が発生したきっかけ」や「普段の体質の傾向」なども考えにいれながら選ばないと頭痛に効きません。

いくら急性で頭痛だけであっても、血の巡りと熱の巡りが悪くなって発生している頭痛に水の巡りを整える五苓散を使っても効かないのです。

まとめ

基本的に漢方薬は、症状ごとに症状を抑える効果ではないし、効果のある有効な成分が含まれているわけではないので、半年以上前から患っている症状などを速攻で抑えるということは不可能です。

体全体を調整することによって、徐々に症状が薄く、少なくなって消えていくような治り方をします。

ですので、どうしてもある症状だけをなんとかしたいのであれば、漢方薬ではなく病院の薬を飲むしかないですね。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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