漢方薬相談ブログ

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だから治らない!漢方薬の効果に対するとんでもない誤解

  1. 漢方薬は効果がわかりにくいわけじゃない
  2. ネットの漢方薬の情報はデタラメ
  3. なぜ、漢方薬の効果がわかりにくいのか?
  4. 漢方薬の本来の効果
  5. 同じ漢方薬なのに3種類の異なる効果
  6. 派閥で微妙に変わる漢方の効果
  7. まとめ

「漢方薬っっていまいち効いているかどうかわからないよねー」

病院の薬は「薬で症状を抑える→薬の効果が切れて症状が再発→薬で症状を抑える」以降、エンドレス。というパターンが多いので、「だったら漢方薬なら根本的に治りそう!」と結構な期待を抱いて飲んでみたら、冒頭のセリフ。

こんな人、多いんじゃないでしょうか?

効いているかもと思い込みながら、気づいたら半年も経っていて未だ病院の薬は全くやめられていない…

実は漢方薬の効果って病院の薬と違って特殊なのです。

これ、穏やかでわかりにくいって意味じゃなく、本当に特殊なんですよ。

だから、病院の薬みたいに「飲んだら手放しで効くんじゃないの?」と思って飲んでみても、実際に効いているかどうかを判別するのにも四苦八苦します。

では『なぜ漢方薬の効果はわかりにくいのか?』

『漢方薬の効果って何が特殊なのか?』を解説したいと思います。

これを知らないといくら漢方専門薬局で高額で良さそうな漢方薬を飲んでも意味がなかったりしますので、ぜひ、最後まで読んでいただけたらと思います。

漢方薬は効果がわかりにくいわけじゃない

漢方薬は特殊な効果なので、わかりにくいとお話しましたが、実はわかりにくいわけじゃありません。

例えば、うちに急性の食あたりで来られた方。

どうも牡蠣にドストライクであたったみたいで、嘔吐に下痢に上に下にの吐き下し。

うちに来られたのは嘔吐、下痢が治った2日後(うちが休みだったため)だったのですが、その時は胃が全く動いていない感じで、食べるとまた吐きそうな感じでなんとも全身の力が出ません。

そこである漢方薬をお渡ししました。

そうしたら次の日に1袋飲んで5分後(これは早すぎると思うけど)から元気な感じになって2袋目にはもう治ったそうです。

この例、急性病だったら、うちでは別に珍しくありません。

この例だと効果は誰でもわかる感じですよね。

でも、他の漢方薬を出している病院や漢方薬局とうちは漢方薬の選び方が全く違います。

ネットの漢方薬の情報はデタラメ

病院やネットの漢方薬の情報をもとに漢方薬を選ぶとなると「食あたりに効く漢方薬」を元に選ぶと思います。

医者が使っているツムラのマニュアルを覗いてみたら、食あたりは「胃苓湯か大承気湯」となっていました。

わおっ大承気湯!!

17年間の漢方相談人生で一度も使ったことがないですね。

胃苓湯もほぼ使ったことがないです。

とそれは置いといて、まずツムラ115番の胃苓湯の詳しい情報をみてみると「効能効果」のところに「下痢、嘔吐、食あたり」って書いてあります。

次にツムラ133番の大承気湯の詳しい情報をみてみると「効能効果」のところに「食あたり」が書いてあります。

ただ、大承気湯には「下痢、嘔吐」はありません。

ツムラのマニュアルに限らず、ネットの漢方薬の情報も大体、似たり寄ったりで「効能効果」のところに『ある病名やある症状』が並べられています。

ここで注意しないといけないのは、『病名と症状の名前が並んでいるだけ』でそれをどんな効果で治すのか?は「効能効果」の項目どころか、どこにも書いていません。

つまり、実際にどんなメカニズムや働き、役割で治すのかはどこにも触れられていません。

単に『この漢方薬は下痢や嘔吐の人に使うことがあります。』しか書かれていないのです。

そして、この情報がいつの間にか、『その症状を治してくれる』という壮大な誤解につながっていきます。

ちなみに漢方薬を処方している当の医者も誤解しているので、一般の方は余計に漢方薬の説明に書かれている病名や症状がそれを治すものだと思っているのです。

がしかし、これは『完全な間違い』なのです。

なぜ、漢方薬の効果がわかりにくいのか?

先ほどの食あたりの方の話ですが、食あたりといっても色々あります。

普通は食べ物を食べたら吐いたとか下痢したというのがスタンダードですね。

僕の場合は、吐かないで下痢があって蕁麻疹が出た。なんてパターンを踏むことが多いです。

そして、うちに相談に来られた時は吐くのと下痢はもう終わっています。

「なんか気持ち悪い…疲れが半端ない…」

きっかけは食あたりですが、今の状態が果たして食あたりなのでしょうか?

今の状態って病名なんてありません。「食あたりから始まった何か」ですよね。

ところが、漢方薬を処方しているほとんどの先生はこういった微妙なその人独自の状態(今の体質)を診断できません。

だから、よく考えたら違うかもしれないけれど、しょうがないから「食あたり」と説明に書いてある漢方薬を選びます。

せいぜい、胃もたれで六君子湯あたりでしょうか?

でも問診すると胃もたれてわけでもなかったですが…

どちらにしろ体質診断オールスルー無理矢理、病名に当てはめて選んでいるので、効くわけがありません。

だって最初から自分独自の原因を治してくれる効果の漢方薬を飲んでいないからです。

下痢してるのに鎮痛薬を飲むくらいのいい加減な選び方をしているわけです。

そりゃ効くわけないですよね。

漢方薬の本来の効果

ちなみに胃苓湯の効果は「上焦の水滞の証」、「上焦の気滞の証」、「水証」というもので、これが何かというと体の肩から上の部分に水と気の巡りが滞っているので、その滞った水と気を体の下方に降ろします。

そして、腎臓の排尿作用を高めて、オシッコで食あたりで汚れた水を出す感じですね。

「食あたりになんとなく効く」ではないのです

これが効果です。

ところが、ここからが漢方薬の深いところなのですが、この効果はあくまで『日本漢方においての効果』で、同じ胃苓湯でも他にも2つ、効果の考え方が違うものがあります。

同じ漢方薬なのに3種類の異なる効果

漢方には体質の分析の方法、治療や効果の考え方の違いから大きく3つの流派があります。

1つは中医学。

漢方薬局のほとんどは、この中医学という考え方(派閥)の漢方をやっています。

そしてもう一つは古方。

この派閥に関しては最早、専門で治療している先生はいないと思います。

最後に僕がやっている日本漢方。

これは、中国の昔からの伝統医学を日本に輸入して、日本人の風土や体質に合わせた漢方にした感じです。

室町時代から明治の手前までは、日本の医学は今の西洋医学ではなく日本漢方でした。

ちなみに日本漢方は古方を元に日本バージョンにアレンジしています。

派閥と書きましたが、日本漢方を実践している先生は、ほぼいません。

冗談抜きで全国で何十人もいないかもしれません。

漢方薬局のほとんどは中医学で、医者は無派閥というか、そもそも漢方の医学理論を知らないので、メーカーマニュアル販売派とでも言えばいいでしょうか。

派閥ごとの病気の考え方、体質分析の方法は、今回は置いておいて、さっきの胃苓湯を例に『効果』を説明したいと思います。

派閥で微妙に変わる漢方の効果

さて、同じ胃苓湯なのに派閥で効果の説明が変わりますが、まずは中医学から。

【中医学の胃苓湯の効果】
理気化湿、利水止瀉。
これは気を巡らせて消化器の不要な水を取り除いて、下痢を止めるという意味ですね。

消化器に湿があり、水下痢でむくみがある人に使うとされています。

さっきのうちに来られた方は下痢はもう終わっているのでこれで治療にはなりませんね。

【古方の胃苓湯の効果】
脾胃和セズ、腹痛泄瀉シ、水穀化セズ、陰陽分カタラズを治す。

補足として太陰となっています。

といっても意味不明ですよね。

解説すると食物を運ぶ機能と消化機能の連携に不具合が起きて、お腹が傷んで、下痢し、形にならない便が出て、陰陽の調和できていないものを治す。

というもので、効果というよりも、食あたりに限らず、こういう状態で補足で太陰があるので、体力がない虚弱なタイプを治すもの。とされています。

この考えから「苓桂朮甘湯はめまいを治すもの」みたいな誤解が生まれたと思うのですが、『あくまで症状を含めた状態に対して治療する』というもの。

ちょっとこの辺は深くなってきますが、漢方は『分析した状態=漢方薬の効果』的なところもあるので、古方ではこんな感じです。

ただ、これだけではわからなすぎて古方の理論で治すのはかなり困難です。

そして僕のやっている日本漢方は先ほども少し紹介しましたが、

【日本漢方の胃苓湯の効果】
「上焦の水滞の証」、「上焦の気滞の証」、「水証」ってやつですね。

気滞というものがあるので、日本漢方ではこちらを飲む場合、食あたりというよりは、神経性胃炎に関わる下痢とか、ストレスでひどくなる過敏性腸炎、熱射病などに使う感じです。

胃腸症状+神経性が合わさる感じですね。

そして『少陽病、虚実中間』という条件がつき、実際に選ぶ時は、その病気になってからどれくらい経っていて、病気として進んでいるか?

体力や抵抗力のレベルはどんな感じか?

というのを合わせて考えて合っているかどうかを考えて選びます。

胃腸症状+神経症であっても時間の経ち方や体力のレベルによって、選ぶ漢方薬は変わります。

どれも古方を出発点としていますので、効果だけでみると似ていますが、体質を診断する方法は全く違ってきます。

(漢方薬によっては、派閥によって同じ漢方薬でも全く違う病気や症状に使うことはめずらしくありません)

いずれにしろ、うちの患者さんは食あたりはきっかけなだけで、状態的にはどれにも当てはまらないので、少なくとも胃苓湯を飲んでも何も変わらないか、副作用で喉が渇いたり、便がカチカチになったりします。

まとめ

漢方薬の効果をネットで調べたりする人もいますが、効能効果の項目はあっても、実際には効果のことは書かれていないか理解できないことが多いです。
効能効果の欄に症状や病名がズラズラと並んでいるだけ。

そして漢方薬は症状を抑える効果ではないので、そんなものをみて症状や病名で当てはめて選んで飲んでも効くわけがないのです。

効いたとしてもそれは『単なる運』です。

ちなみに医者は体質を分析できないので効能効果がわかっていないと思います。

漢方薬はネットや本に書いてある効果があっているとか限りません。

『どの派閥の考え方の効果なのか?』まで調べるか又は説明を受けないと効果を知ったことにはならないのです。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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