漢方薬相談ブログ

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漢方薬と体質が合っているかどうかってどういうこと?

  1. 漢方薬と病院の薬は違うもの
  2. そもそも体質とは何?
  3. 具体的に漢方の考える体質とは?
  4. 体質はどうやって分析するのか?
  5. 体質と合っているかどうかがわかるのは?
  6. 飲んでいる漢方薬が合っているかどうかの確認方法

うちのオンラインの漢方相談でたまに聞かれるのが、「〇〇という漢方薬を飲んでいるのですが、私に合っていますか?」というもの。

みなさん、なんとなーく『漢方薬は体質と合っていないと効かない』というのはご存知のようです。

では、具体的に『漢方薬と体質が合っているとはどういうことかなのか?』となると、よくわからなくなりませんか?

まず、お伝えしておかないといけないのは、うちに他の漢方医が選んだ漢方薬と体質が合っているかどうかを聞くのは意味がありません。

それは漢方薬の治療の法則が関わっているのですが、それはこちらの記事「今、飲んでいる漢方薬を他の漢方専門医に聞く意味がない理由」やこの記事内でも説明したいと思います。

結論から言ってしまうと、漢方薬と体質が合っているかどうかは漢方薬を飲んだ後の『体全体の症状や状態』を観察しないと判断できません。

ですので、飲んでいる途中経過で合っているかどうかなんてわからないのです。

それでは、『漢方薬と体質が合っているとはどういうことなのか?』を具体的に説明したいと思います。

漢方薬と病院の薬は違うもの

最初にまず頭の中をリセットしてもらいたいと思います。

とにかく皆さん、無意識に漢方薬と病院の薬を一緒くたに考えていること多いのですが、効果や治し方は全くの別物。

漢方薬の治し方や効果については、ネットや本を読んでいてもよほど専門的に勉強した人でない限りは、『全く知らないし理解しずらいもの』と思ってもらっても差し支えないです。

漢方薬は特定の病気を治したり、症状を抑えたりするような単純なものではありません。

そんな成分も含まれていません。

ぶっちゃけ成分的な考えがないので、どんな成分が含まれているのかもよくわかっていません。

でも、漢方薬は東洋医学の理論で動いているものなので、それでも全く問題ありません。

そもそも体質とは何?

そもそも体質って何?って話。

よく誤解されているのが、マニュアルを見てしか漢方薬を出せない先生が「めまいに苓桂朮甘湯」とか「ニキビに桂枝茯苓丸加薏苡仁」などを処方するので、病名が体質だと誤解している人がいますが、病名は体質のことではありません

病名は西洋医学がつけた病気の名前にしか過ぎません。

また「月経不順に当帰芍薬散」など、これまたマニュアルを見てしか漢方薬を出せない先生が処方したりしますが、症状も体質のことではありません

症状は症状でしかないのです。

ネットなどの漢方の情報を見て、『自分の病名』『今の自分の症状』を当てはめていって漢方薬を選ぶ人(医者もこれですが)がいますが、西洋医学の病名も症状も体質のことではありません。

では体質って何か?っていうと「気血水」や「五臓六腑」などが、どんな状態になっているのかを東洋医学的に診断したものが体質なんですね。

具体的に漢方の考える体質とは?

例えば、二人のアトピーの人がいたとします。

Aさんは男性で乾燥した湿疹が多く、主に顔や手足に湿疹ができている人。かくと出血しやすいです。

夏に頭痛が起こりやすく、のぼせやすさもあります。

Bさんは女性で湿疹がジュクジュクと汁が出やすく手足だけでなく首や背中もひどく、月経前に湿疹の状態が酷くなる人。

オシッコの回数が多く、足が冷えやすかったりします。

AさんもBさんも病名はアトピー症状はかゆみですが、体質は全く違います。

そして「病名」や「症状」を当てはめて漢方薬を選ぶと厳密には、体の状態が全然違うのに同じ漢方薬を飲むことになります。

そんなざっくりとテキトーな選び方で効くわけがありません。

漢方的に体質を診断するとAさんは「熱証」、「燥証」、「肝熱の証」という体質になると考えられます。

そしてBさんは「水滞証」、「肝の気滞の証」、「瘀血の証」と考えられます。

『証』とは、病的な体質とか原因という意味でもあります。

熱証とは「体に余分な熱がこもっている」という意味で、その熱証が長く続くと体を乾燥させる「燥証」に発展します。

全部の証を説明すると長くなるので、割愛しますが、これが『体質』ですね。

そして、この状態をニュートラルにする漢方薬を選びます。

Aさんの場合なら、熱証の熱を鎮める生薬、乾燥を潤す生薬、肝臓の余分な熱を鎮める生薬、これら全てが含まれ、バランスよくが配合されている漢方薬を500種類の中から選びます。

「かゆみを止める」とか「めまいに効く」などのモヤーとした感じで選ぶわけではなく、割とがっちりと理論的に追い込んで選んでいきます。

体質はどうやって分析するのか?

体質は『全身の症状』『他に持っている病気』『過去の病歴』『生活環境』『生活リズム」、『食べているもの』『精神の状態』『親の病気』などを総合的に分析して導き出します。

症状や病名を当てはめるのではないのですね。

それらはあくまで分析材料の1つでしかありません。

ですので、ネットや漢方の簡単な本に書いてある病名や症状は分析するための参考情報を載せているだけ。

実際はそこから『個々でしっかりと分析してくださいね』となります。

ちなみに漢方では頭痛という1つの症状を治す場合も絶対に体質を分析します。

つまり、1つの症状を治す場合も漢方薬を使う限りは、体全体を総合的に判断するということです。

体質と合っているかどうかがわかるのは?

気をつけないといけないのは、例え世界一の漢方の腕を持っている先生でも分析した体質は漢方薬を飲む前は『推測』でしかないということ。

その体質が「合っていた!」となるのは、定めた期間、その体質に合わせて選んだ漢方薬を飲んで、なおかつ、全身の状態の変化を確認して、事前の想定通りに良くなっていれば、体質と漢方薬があっていた!と、その時に初めて答えが出ます。

体質は「推測」、その推測から漢方薬を選ぶわけですから、決まったマニュアルなんてあるはずがありません。

そもそも先ほどのAさん、Bさん、同じアトピーであっても体質は全然、違います。

マニュアルなんか通じるわけがないのです。

実はマニュアルがないから、分析する先生によって診断する体質も合わせる漢方薬も変わります。

ですので、冒頭の他の先生が選んだ漢方薬が合っているかどうかを他の先生が判断はできないのです。

あえて言うなら『それを飲んで治っていれば、合ってるし、治ってなければ合ってないし』となるでしょうか。

ただ、漢方薬の「合っている、合っていない」の判断は治っているかどうかだけでは判断できません。

飲んでいる漢方薬が合っているかどうかの確認方法

漢方薬が合っているかどうかを判断するのが難しいのは、自分が気になる症状が良くなっているからその漢方薬が合っているとは限らないことがあるからです。

例えば、「手足の湿疹は引いてきたけど、顔の湿疹はひどくなってきた」とか、「全体的に湿疹が引いていたけど胃痛が起こるようになり足の冷えを感じるようになってきた」など、漢方薬は全体のバランスを取っているので、『何かが良くなっても何かは悪くなる』なんてことは最初の数ヶ月は普通にあります。

それらも総合的に判断して合っているかどうかを考えるわけです。

なので100%合っている漢方薬なんて、まず存在しません。

80%合っていれば御の字、後は飲み終わるたびに漢方薬を変更して微調整して、悪い部分をなくしていくのです。

もちろん、体質は推測、その推測に漢方薬を合わせるわけですから、例え世界一の漢方の腕を持った先生でも飲み終わった後に答え合わせしたら「実際は全く合っていなかった」なんてこともあります。

一般的な漢方治療の誤解は、「漢方の専門家の先生に選んでもらった漢方薬を半年くらい飲めば、後は勝手に治っていくだろう」と思っていること。

僕の治療経験上はあり得ません。

飲み終わるたびに全身の状態から成否を判断するわけですから、どこかは良くなったり、悪くなったり、または良くなったと思った湿疹が季節が変わって、また悪くなったりと波があります。

この症状の波を分析して、その都度、体質と漢方薬を合わせていきます。

ですので、漢方医にやってもらう仕事は、自分に合っている漢方薬を選んでもらうと言うよりは、根本的に治るまで一緒に調整を繰り返していくという感じの方が正しいですね。

とにかく、最初に証を診断していない場合は、「本当は治療すら始められない」ということです。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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