漢方薬相談ブログ

漢方薬相談ブログ

自分で漢方薬を選んで飲む人が圧倒的に誤解している漢方治療の真実

  1. 漢方薬は症状や病名で選ぶものじゃない
  2. 漢方治療を誤解させている厚生省と医者
  3. 絶対に守らなくちゃいけない漢方治療の大原則
  4. 漢方薬を選ぶ際はたくさんの候補の漢方薬の中から消去法で選ぶ
  5. 治療効果は決まっているわけではなく確率で考える
  6. 漢方薬は症状を抑えることが目的ではない
  7. 人それぞれの体質を治療するので同じ病名でも選ぶ漢方薬は異なる
  8. 自分で漢方薬を選ぼうと思ったら超難解

Youtube動画が人気ですが、僕はかなり限定的な場面のゲーム攻略動画や動画アプリなどの操作手順の説明みたいなものしか見ません。

個人的に人気があることがよくわからないのが、あっちゃんがやっているようなニュースなどの解説。

動画で本の紹介をしてくれてるのだから(今は知らないけど)、動画なんて中身スカスカで時間がかかるものよりも、その本読めばいいじゃん!と思いました。

なんて疑問に思っていたら、こんな記事がありました。

教養があるとインフルエンサーにはなれない?

「ファスト教養」

もうなんかしっくりきましたね。

わかった気になれるインスタントな知識。今の時代はこんな感じになってきているのですね。

ネットが始まった頃の黎明期は、今ほどのサイトの数もなかったので、本当に役立つ情報に行き着けたのです。

ところが今はサイトは無数にあり、そのほとんどがフェイク。

困ったことに専門的な知識の場合、フェイクかどうかの調べようもない。

知らないことを調べているのに、その情報が本当かどうかも調べなくちゃいけません。

もちろん、本当かどうかを調べるために調べたサイトも本当かどうか調べて…と要は結局、調べる対象の基礎をガッチリとわかっていないと、その調べた情報が本当かどうかはわからないわけです。

つまりファストな知識は危険が一杯だということです。

で本題は何かというと、この記事を読んでいて思ったのが「自分で〇〇の漢方薬を飲んでみて、それで効かなかったから次に〇〇の漢方薬を飲んでみて」と『自分で漢方薬を選ぶ人』もこんな感じに似ているのかなと。

実は漢方薬って、薬の業界や医者の業界でも、まともに漢方薬の治療をやっていこうと思っても難解すぎてわからないとされている分野なのです。

『それを医療の専門家でない人が自分自身で選ぶ』

普通に考えて無理なんですよね。

ではなぜ、なんとなく素人の方が選んでもいけそうに感じるのか?

そういった人達は何を誤解してしまっているのかを説明したいと思います。

漢方薬は症状や病名で選ぶものじゃない

これもネットの影響だと思います。

いわゆるネットで調べてわかった気になれるインスタントな知識を仕入れて漢方薬を選んでいるんだと思います。

なんでこういう傾向の人が出てくるようになったのか?

これは推測でしかありませんが、日本の漢方薬の設定医者の勘違いの影響ではないかと思います。

自分で漢方薬を選ぶ人は、当然、体質を分析して漢方薬を選ぶのではなく、症状とか病名から漢方薬を選んでいると思います。

めまいに苓桂朮甘湯とかニキビに十味敗毒湯とか。

でも、これって冷静に考えてみるとおかしいですよね。

みんな『漢方薬は人それぞれの体質に合わせて選ぶもの』ってなんとなく知ってるのに、症状から選んだり、病名から選んだり。

症状や病名ってその人自身の体質じゃありません。

めまいがある人はみんな同じ体質、ニキビがあれば、みんな同じ体質とか怖いです。

仮に、めまいあれば同じ体質だとして、めまいがあって月経の不調がある女性とめまいのある男性は同じ体質なの?

体質というのは病名や症状のことではなく、正にその人だけの体質のことなのです。

男女でも変わるし、めまいという症状しかない人とめまいも不眠も貧血もある人は体質が全然違います。

結局、なんだかんだと人それぞれの体質ではなく、症状とか病名から漢方薬を選んでいるのですよね。

漢方治療を誤解させている厚生省と医者

これをおかしくないとさせてしまっているのが、厚生省や医者です。

厚生省の漢方薬の設定は悪意があってではなく、漢方薬を始める際に医薬品という設定にしたので、それまでの西洋医学の医薬品の設定に無理やり当てはめるしかありませんでした。

ですので、ある漢方薬は何の病気や症状に対応しているのか的な説明や設定になってしまいました。

詳しく説明すると長くなるので、割愛しますが、漢方薬の一般的な説明は効果などと関係なく医薬品販売の法律上の設定であって『治療と関係ない』と考えてもらえばいいと思います。

そして、医者。

医大では漢方治療のことは学びませんので、実際に漢方薬を選ぶときは、医療の素人の人が漢方薬を選ぶのと同じ方法を使います。

つまり、病名や症状に対応させているかのようなマニュアルを漢方薬メーカーさんからもらっていますので、そのマニュアルを見て選んでいるだけ。

漢方的な体質などは分析できないので、体質を治すとか根本治療するなんてことはできません。

絶対に守らなくちゃいけない漢方治療の大原則

漢方治療で完全に誤解されていることがあります。

実はここを誤解していると全く漢方薬を使えていないことになります。

その原則を紹介します。

1漢方薬を選ぶ際はたくさんの候補の漢方薬の中から消去法で選ぶ。

2治療効果は決まっているわけではなく確率で考える。

3漢方薬は症状を抑えることが目的ではない。

4人それぞれの体質を治療するので同じ病名でも選ぶ漢方薬は異なる。

1つずつ説明しますね。

漢方薬を選ぶ際はたくさんの候補の漢方薬の中から消去法で選ぶ

例えばニキビの治療で漢方薬を選ぶ時にネットなどを調べると十味敗毒湯とか桂枝茯苓丸なんかが出てきます。

そして、そこに書いてある症状とかで思い当たるものがあれば「それでいいか」みたいに選んでいると思います。

でも、これって大間違いで、例えばニキビで使われるであろう漢方薬は27種類くらいあります。

通常は1つの病気などで使われるであろう漢方薬は大体、40種類くらいあります。

普通の人がネットで調べれば当然、大手会社のインスタントな情報が上がってくるので「ニキビには十味敗毒湯ですよ」みたいに1つか2つだけしか出てきませんが、本来は40種類ある中から最適な漢方薬を消去法で選ぶのです。

40種類もあるので、どの漢方薬も書いてある症状なんて似通ってます。

「こっちの漢方薬にも当てはまるし、あっちの漢方薬にも当てはまるし」といった具合。

だったらどうやってそれを1つにまで絞るのか?

それは「体質と照らし合わせる」のです。

当たり前ですが、漢方薬は体質別に選べるようになっているので、体質を分析すれば、何を選べば良いのかが出てくるようになっているのですね。

まず候補となる漢方薬を40種類ほど思い浮かべる。その後は、何が一番最適か、体質に照らし合わせて、当てはまらない39種類を間引いていくのです。

これを『鑑別』といって漢方薬を選ぶ際の基本中の基本です。

自分で調べた1、2種類のどっちかにするなんて浅くて軽いものではありません。

治療効果は決まっているわけではなく確率で考える

病院の薬は事前に効果が決まっています。

ところが漢方薬は決まっていません。

「水を巡らせる」とか「気を安定させる」とか、もちろんある程度の効果は決まっているのですが、咳を止めるとか頭痛の痛みを止めるなど具体的な効果ではないのですね。

病院の薬は、薬の成分が、痛みの発生物質などが働かないように無理やり止めます。

体内にはない外部の異物(薬の成分)が無理やり止めることができるので、事前に効果がわかっているのです。

でも、漢方薬は漢方薬の成分が痛みを止めるわけではありません。

体内部の調整をして、調整が取れた結果、症状がなくなっていくのです。

体内部の調整ができる漢方薬を選ぶ必要がありますが、その調整は今どんな体質なのかがわからないと調整できないわけです。

そして、体質の分析は漢方医の予測でしかありません。

これは「僕の場合は予測している」というわけではなく漢方治療とはそんなものなのです。

なので、予測した体質とそこから調整できると予測された漢方薬。

どちらも予測なので、漢方治療というのは、『どれだけ合っている確率が高いものを選べるか』という治療になってきます。

漢方薬は症状を抑えることが目的ではない

漢方薬は症状を抑えることが目的はなく、不調になった体質を調整することが目的です。

症状がなくなるのはあくまで体質の調整がうまくいった結果です。

ですので、症状や病名で選んでも無意味。

今の体質を『調整できる漢方薬』を選ぶ必要があるのです。

人それぞれの体質を治療するので同じ病名でも選ぶ漢方薬は異なる

漢方には異病同治、同病異治という原則があります。

異病同治とは、『異なる病気でも使う漢方薬は同じこともある』

同病異治とは、『同じ病気でも異なる漢方薬を使う』

ということでこの2つの言葉が正に『人それぞれの体質に合わせる』ということと『症状や病名で選ばない』ということを示しています。

葛根湯は風邪でよく使われますが、僕はこれで蕁麻疹を治したこともあるし、蜂窩織炎という難病を治したこともあります。これは異病同治ですね。

ちなみに僕が使っている教科書には、葛根湯が使える参考病名は以下です。
風邪、急性の下痢、初期の蕁麻疹、初期の中耳炎、初期のアトピー、高血圧、破傷風、痙攣、筋肉痛、肩関節痛、神経痛、気管支喘息、リウマチ、乳腺炎、大腸炎。

めまいを逍遙散で治したこともあるし、柴胡桂枝湯で治したこともあります。
これは同病異治ですね。

めまいに関しては体質別で40種類くらいの漢方薬が考えられます。

漢方薬は「どんな病気や症状にも効く」という都合の良い魔法の薬ではなく『その病気の人がどんな体質なのか』で選びます。

自分で漢方薬を選ぼうと思ったら超難解

マウント取るような内容になっちゃいますが、今の時代、専門的なことでもネットのインスタント知識で知ったつもりになる人が多いかもしれないですが、漢方はとても奥深いものです。

マニュアルを読んで知ったつもりでなんとかなるものではありません。

僕はネットで色々と調べることが得意な方だと思いますが、それでも専門的なことは専門家に丸投げです。

僕は師匠好きなので、ピアノも料理も即座に先生について学ぶ方を選びます。

若い時はお金がなくって、安く済ませたいがために自分で調べてあれこれとやっていましたが、所詮、素人のインスタント知識知ったつもりでやっても、結局、結果を得られずに時間がかかっただけになっていました。

なので、今は少々高くても最初から、その筋の専門家を頼ります。

あれから歳をとって、自分だけで専門的な何かをやるのであれば、専門家と同じだけ勉強しないと無意味なんだなということがわかりました。

●ニキビ、アトピー で、お悩みの方は、こちらの「漢方無料相談」から送信してください。

●お問合せや店頭相談のご予約は、こちらから、ご予約ください。(店頭も初回の相談は無料です)

日本全国オンライン相談受付中!

※全国(北海道、青森、岩手、仙台、東京都内、群馬、横浜、富山、福井、滋賀、名古屋、京都、奈良、大阪、兵庫、岡山、福岡、大分、鹿児島など)からネット、メール、電話、LINEやメッセンジャーなどのテレビ電話などのオンライン相談を受付中です!

【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

著者の詳細情報はこちら

FacebookTwitterInstagram

関連した記事

なぜ自分で選んだ漢方薬や病院の漢方薬だと治療に失敗するのか?
漢方薬は病院の薬と違って合っているのかどうかも自分ではわからないこともあります。なぜ、そうなるのかの理由を具体的に説明しています。
漢方の専門家に聞いた漢方薬を自分で買って飲んでも 無意味な理由
漢方薬は東洋医学に基づいて体質診断、処方されるもので、症状を抑えたりするものではありません。症状を抑えるわけではないので、専門家のフォローがないと治療が進んでいることすら確認できないこともあります。
漢方薬が効いているかどうかの確認は素人の方(医者含む)にはできない理由
「漢方薬の飲んだけれど効果がよくわからない」それ、漢方薬が効いてないのではなく効果の確認方法がおかしいのかもしれません。漢方薬は効いているかの確認が特殊なんです。