ソフィアA錠(ピル)と温経湯を一緒に飲む無意味さ
よく月経困難症や多嚢胞性卵巣、PMSなどにソフィアA錠などのピルと温経湯や当帰芍薬散などの漢方薬を同時に処方している医者がいますが「あれ、一体何がしたいのだろう?」と不思議なんですよね。
ある意味、『ピルの作用も漢方薬の作用もよくわかってないからできること』みたいな感じです。
だって、ピルも漢方薬のこともわかっているなら、あんな出し方、普通できませんよ。
「そんなことはない、ちゃんとわかってやってる」って言うのなら、ぜひぜひ、治療の方針がどこにあるのか聞いてみたいものです。
どうせ、ツムラの営業か、勉強会で小耳に挟んだ情報、まるまる信じて、自分で何も考えないでマニュアル処方してるのでしょうが…
なぜ、ピルと漢方薬を同時に出したら、何もわかってないことになるのでしょうか?
ピルの効果
ピルと漢方薬に限らず、アトピーの人にステロイドと十味敗毒湯を同時に処方する、不妊症の当帰芍薬散なんかもそうですが、あの治療、意味がないのですよ。
例えば、ソフィアなどのピルとよばれる薬は、エストロゲンとプロゲステロンという2つの人工ホルモンが合わさったものです。
これらが、体に入ってくると、2つのホルモン量が上がり、ピルによるウソの高温期状態となり、卵胞の成熟を抑え、排卵を抑えます。
ピルをやめるとウソの高温期状態がなくなるので、月経のような出血がくるのですね。
要するに平たく言えば、本来の原因はそっちのけで、体を騙しているわけです。
そして、もう一つの特徴は、個人差を考えないで、誰にでも同じ薬を処方します。
厳密には、ホルモンというのは、量が不足しているとかではなく、バランスが崩れて、月経周期や体調が悪くなるのですが、大量に2つのホルモンを体内にいれてやれば、どんな状態の人も極端な方向へ導けるのですね。
それが、ピルで誰でも高温期になり、やめれば、個人の体質とは関係なく、誰でも月経のような出血がくるということ。
暴力的といってもいいような一方的なピルという人工ホルモンの命令書で、無理やりな嘘の状態にして、ごまかしているわけです。
ピルが治療にならないその理由
月経や月経時の出血というのは、出血さえあれば、いいというものではありません。
それは、ただの不正出血です。
正常で健康な月経というのは、ホルモン(命令書)が分泌されているかどうかだけではないのです。
子宮内膜は、血を元に作られるので、子宮に対しての血の巡りやその血が十分にあるのかどうか、貧血などとも関わってきます。
卵巣も同じで、ホルモン(命令書)だけあれば、いいのか?というと、卵胞や卵巣にも血が巡っていなかいと卵子も育ちません。
漢方的には、卵巣や卵胞は、水の巡りとも深い関わりがあります。
何が言いたいかというと、婦人科では、ホルモン剤しか処方しませんが、血の巡りは冷えとも関係していたり、血の量(貧血)も関係するし、その血をつくる胃腸も関係したりして、月経って、つまりはホルモン(命令書)だけでじゃなく、全身が関わってるのですね。
西洋医学(病院)の薬は、基本的には、対症療法といって、薬の成分が体内に入ってくると、その成分が痛みを抑えたり、月経周期のホルモンを変えたりします。
成分そのものが、強制的に体の中の働きを変えるので、成分がなくなれば、元の病気の状態になります。
それを治っているとは言いません。
『ホルモン剤で一時的にごまかしているだけ』
本当の原因は人それぞれ、他にあるわけです。
漢方では人それぞれの原因を治す
月経には、ホルモン(命令書)だけでなく、血の巡り、血の量、血をつくる消化器、冷え、果ては臓器がちゃんと動くための睡眠や自律神経も関わっています。
『卵巣嚢腫ができた』『多嚢胞になった』『月経痛がひどい』『PMSがひどい』というのは、ホルモン(命令書)だけでなく、体のいろいろな機能も関わってます。
そして、その原因は、人それぞれ。
同じ、多嚢胞や卵巣嚢腫でも人によって、原因もいろいろです。
漢方薬を選ぶ時に、なぜ、いちいち全身を調べないといけないかというと、人間の体はつながっているので、どこかの問題がどこかにつながり、それが、卵巣嚢腫や多嚢胞という状態につながっているからです。
漢方は、全身の状態を調べ、『人それぞれの原因』を分析して、そこを治すようにするのですね。
なので、まず、病院の保険適用の漢方薬で意味不明なのは、体質も調べずに多嚢胞という病名だけで漢方薬を選んでいること。
もっと言うと、単にマニュアルだけで選んでいることです。
でも、この問題は、まだ序の口です。
漢方薬が効いているかどうかの確認方法
ピルは飲む人の体質なんて何も考えません。
もちろん、その人の卵巣嚢腫や多嚢胞の原因も関係ありません。
人工ホルモンを強制的にいれることによって、誰でも同じように、体の働きを無理やり変えます。
漢方薬は、その人の原因や弱点を調整します。
ここで注意してほしいのは、温経湯や当帰芍薬散にホルモンは含まれていないし、ホルモン作用でもありません!
例えば温経湯は、血を増やしたり、手や唇の熱をとったり、下痢や嘔吐感をとったりしてくれますが、どんな風に治るのかは、その人の体質によります。
また、漢方では分析した体質と漢方薬が合っていれば、効果を発揮しますが、そもそも、体質と漢方薬があっていなければ、何も効果がないか、副作用があります。
温経湯や当帰芍薬散は何も月経関連の薬ではないのです。
漢方薬には、有効成分がなく、強制的な効果もありませんので、飲んだ後の全身の変化をお聞きして、その漢方薬がちゃんと効いているのか?を確認します。
卵巣嚢腫の状態や多嚢胞、月経痛、PMSなどの症状も含めて、全身の症状が良い方向へ進んでない場合、違う漢方薬に変えないと、そんなのいつまで飲み続けたって、効きません!
となるとです。
温経湯や当帰芍薬散は、ホルモン作用でもないし、卵巣に直接、効くわけでもありません。
全身の体調が良くなることによって、結果的に多嚢胞や、月経痛、卵巣嚢腫が良くなっていくわけです。
なので、なんとなく飲んでいて月経痛が弱まったり、多嚢胞の嚢胞が減ったりはしません。
こういった状況で、ピルと漢方薬を同時に処方した場合、どうなるのでしょうか?
ピルと漢方薬の併用では効果を確認できない
ピルを飲んで、やめれば、誰でも強制的に月経みたいな不正出血がはじまります。
ピルと漢方薬を同時に出した場合、医者は、どうやって、その漢方薬が効いたと判断するのでしょうか?
なんとなく?
例えば、うちでは漢方薬を選ぶ前に、全身の状態や症状を調べます。
そして、『現在の病的な体質』を診断します。
その上で、漢方薬を飲んでもらい、次回、再び、全身の状態や症状を調べます。
『良くなったところ』、『変わらなかったところ』、『悪くなったところ』、いろいろな変化をみて、今の漢方薬を続ければ、卵巣嚢腫や多嚢胞の状態などが良くなっていくのかを検討し、答え合わせするわけです。
もちろん、この時点で漢方薬と体質があっていれば、月経痛がなくなったり、PMSがなくなったりしますが、PMSだって、『吐き気はなくなったけど、頭痛は残っている』なんて治り方もあるわけです。
とにかく漢方薬は、直接、痛みを止めたり、月経を来させたり、嚢腫を小さくしたりしません。
全身のあらゆるところが良い感じに調整されていれば、目的の症状も結果的に良くなるのです。
漢方薬が効いているかどうかは、かならず確認が必要なんですね。
つまり、『病院の薬を併用していると、漢方薬が効いているかどうかを確認できない』のです。
おまけに保険適用の漢方薬は、体質を診断しないで、マニュアルだけで選びますので、どの症状が、どんな風に良くなってくるのか医者にはわかりません。
だから、漢方専門で治療している僕からすると、医者は何がしたいのか意味不明なのです。
医者は漢方薬が直接、痛みを止めたり、月経を来させたりすると思っているのでしょうか?
だったら、漢方薬だけだったらダメなのでしょうか?
たまに「一年間、ピルと温経湯や当帰芍薬散にも変えてみたりしたけど、漢方薬は効きませんでした」という話がありますが、『漢方薬は体質分析して選ばれてないわ、漢方薬の効果は確認できないわ』で、それって漢方薬を飲んでいないのと一緒ですので、漢方薬が効かなかったんじゃなく、残念ながら、最初から治療がデタラメだったのです。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅡ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅢ:薬局新聞社刊
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