膵炎に効く漢方薬って、どんな漢方薬?
よく膵炎に効く漢方薬とか、肝炎に効く漢方薬、頭痛に効く漢方薬など『〇〇病に効く漢方薬』、『〇〇症状に効く漢方薬』などと調べる人がいますが、漢方薬を探すときに、こういった探し方は無駄だし、こんな探し方で漢方薬を探して飲んだって意味がありません。
なぜなら、西洋医学の病名と東洋医学の漢方薬は、本来の何の関係もないからです。
膵炎などを漢方薬で治したければ、膵炎だろうと、風邪だろうと、常に全身の状態を調べて、人それぞれの体質や原因に合わせて漢方薬を選ばないと漢方薬は、ちっとも効いてくれないのです。
今回は、漢方薬で膵炎を治す場合、本来の漢方治療では、どんな漢方薬が効果的なのかを詳しく説明したいと思います。
病名マニュアルで選ぶ無意味な漢方薬
ネットで「膵炎に効く漢方薬」とか「膵炎の漢方薬」と検索すると、『柴胡桂枝湯』や『六君子湯』という漢方薬が出てきます。
口コミ情報なんかもあったりして、なんか、「いかにも膵炎に効きそうな漢方薬!」という感じがしますが、ちょっと待って、冷静に考えてみましょう。
そもそも、膵炎というのは、『西洋医学の病名』です。
漢方薬は『東洋医学のお薬』
漢方は、2千年前に中国から発展してきた医学です。
西洋医学の薬を飲んで治すという方法は、ヨーロッパやアメリカで2百年位前から発展してきたもの。
時間(歴史)も場所も何ら接点がありません。
接点がないだけでなく、治療の考え方も根本から違います。
もはや、別物の医学といってもよいです。
ギターもピアノも弦楽器ですが、「似たような方法でどちらも弾けるよ」なんて言ってる人がいたら、ちょっとアレですよね。
西洋医学と東洋医学が似てると思うのは、それと同じくらい、ちょっとヤバいです。
西洋医学と東洋医学は、何も関係がないので、『膵炎に効く漢方薬』なんていう言葉は、実はおかしいのです。
「ピアノのテクニックを使ったギターの弾き方」みたいな、『意味が全くわからないこと』になっちゃってるんですよね。
病名は体質ではない
膵炎というのは西洋医学の病名ですが、それを要約すると『膵臓が炎症を起こしている』と言ってるだけで、これは体質ではありません。
これが、体質だと思います?
体質というのは、膵炎の人の中でも、「若くて体格の良い男性で、のぼせや頭痛、不眠傾向がある」とか、または膵炎の人の中でも「年配の痩せ型の男性で耳鳴りがあり、胃もたれがあって、時々、蕁麻疹がある」といった人や、膵炎の人の中でも「痩せ型の女性で手足が冷えて、PMSがある」なんて人もいるわけで、膵炎というのは、あくまで、『その人の体質の一部』であって、膵炎なんて体質はないわけです。
膵炎という病名は体質ではないのです。
そして漢方薬は体質に合わせて選びます。
ですので、膵炎は、その人の体質を表しているわけではないから、漢方薬は選べないはずです。
『あなたに膵炎があるということはわかりましたが、全体の体質がわからないと漢方薬は選べませんよ』というのが本来の漢方薬。
となると膵炎の漢方薬というには、なんじゃそら?という話になります。
漢方薬を選ぶ際に必要な体質分析とは
そもそも体質って何?という話。
体質とは『東洋医学的な病気のある今の全身の状態のこと』です。
その病気を発生させている『体内の原因』ともいえます。
例えば、勝手に膵炎の漢方薬にされている柴胡桂枝湯。
本来の漢方では、『胸脇の熱証』といって、胸周辺に余分な熱がこもっている状態で、その熱が消化器に飛び火して、『脾胃の熱証』を起こし消化器が熱をおびて、胃腸にいらない水が溜まっている『脾胃の水毒の証』があり、不要な熱のこもりで『熱による精神症状の証』が出てきて、気が首から上に衝き上げている『気の上衝の証』といった体質の人に合わせるものです。
つまり、自分がこういった状態かどうかを分析するのが、体質分析です。
柴胡桂枝湯の効果
柴胡桂枝湯の効果は、漢方では体を分析した結果、体質(胸脇の熱証、脾胃の熱証、脾胃の水毒の証、気の上衝の証)が、こういう状態であれば、それを調整するものが、すなわち効果なのです。
さっきから体質も効果の説明も意味不明!ってなりますよね。
でも、しょうがないのです。
だって、漢方薬は東洋医学なので、西洋医学とは関係ないから。
柴胡桂枝湯に痛みを抑える有効成分や膵臓の消化酵素を抑える有効成分は一切、含まれていません!
詳しくは、漢方薬の「効能効果」の説明を参考にしても意味がない!?も読んでみてください。
柴胡桂枝湯が合う体質なら、膵臓の炎症も含めて、全身の体質を整えてくれるのが、漢方薬の使い方です。
ちなみに柴胡桂枝湯は、他にも風邪、喘息、中耳炎、肺炎、虫垂炎、腎盂炎、急性肝炎、アトピー、蕁麻疹、逆流性食道炎、十二指腸潰瘍、胆石、腎炎、ネフローゼ、うつ、不眠症、てんかん、不安神経症、肋間神経痛などにも使います。
もちろん、こういった病気を治す成分は含まれていませんよ。
こういった病気は、熱がこもりやすい傾向が比較的、多いので柴胡桂枝湯が使われることが多い。というだけで、病名と漢方薬は何の関係もないので、最終的には『漢方的にどんな体質なのか?』がわからないと漢方薬は選べません。
もちろん、膵炎でも柴胡桂枝湯と反対の冷えが強い『寒証』という体質を治す、温める漢方薬が合う場合もザラにあります。
体質を分析しないで選んでも漢方薬は効かない!
要は病名で漢方薬を選んでも、あてずっぽうすぎて、まず効かないとうことです。
ちなみに膵炎に使う可能性の高い漢方薬は、以下のものがあります。
半夏瀉心湯、生姜瀉心湯、大柴胡湯、四逆散、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、六君子湯、人参湯、小建中湯、大黄附子湯、良きょう湯、安中散、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、大建中湯、黄連解毒湯、柴胡桂枝乾姜湯
などです。
もちろん、この他にも、人それぞれの体質によって、全ての種類の漢方薬が候補になってきます。
病名は体質ではありません!
漢方薬はとにかく、その病気も含めた体質を分析します!
どんな病気だろうと、どんな症状だろうと、とにかく体質!に合わせて選ぶのです。
→実際の膵炎の漢方治療の体験例はこちらをお読みください。「膵炎の漢方治療体験例」
まとめ
漢方に膵炎という体質はありません。
膵炎というのは、西洋医学の病名です。
漢方薬は、西洋医学の病名ではなく、東洋医学の体質に合わせて選びます。
なので、柴胡桂枝湯は膵炎に効く漢方薬ではありません。
同じ膵炎の人でも、体質の違いによって、漢方薬が変わります。
となると、柴胡桂枝湯以外のあらゆる漢方薬が候補になってくるわけですね。
『膵炎があるあなたの体質』に合う漢方薬が、膵炎に効く漢方薬とういうことですね。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 図説東洋医学(基礎編):学研
◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅰ):学研
◯ 図説東洋医学(湯液編Ⅱ):学研
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ やさしい中医学入門:東洋学術出版社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ まんが漢方入門:医道の日本社
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