漢方専門家の漢方薬の選び方(方法のまとめ)
かれこれ漢方相談も16年ほどやっておりますが、世間の漢方薬の選び方というのはホント間違っているなと思います。
ネットで書いてある漢方薬の選び方、医者の漢方薬の選び方。
どれも間違っていまして、なんだったら厚生省が設定している漢方薬の選び方も間違っています。
何で厚生省が!?と思われるかもしれませんが、なぜそうなっちゃったかというと漢方薬を法的に医薬品扱いにする時に西洋医学の医薬品設定しかなかったので、しょうがなく無理やり、西洋医学のルールで東洋医学の漢方薬の設定を行なったので実質の治療上では漢方薬の設定や説明が間違っているのです。
そんな間違った簡単な設定が常識のように出回っているので、病名や症状を当てはめて漢方薬を選べば、「あとは不思議効果で勝手に治してくれる」と素人の人どころか、医者までそんな考えで漢方薬を扱っています。
そこで『本来の自分にあっている漢方薬を選ぶ方法って、とんでもなく難しいんだぞ』ということを知ってもらうために僕が普段、どんな風に漢方薬を選んでいるか、その選び方を他の記事で前編、後編と紹介しましたが、かなり長文になっちゃったので、手順だけまとめておきます。
詳しくはこちらを読んでてみてください。
→ 漢方医が実際に自分に合った漢方薬を選ぶ方法を公開します(下準備編)
→漢方医が実際に自分に合った漢方薬を選ぶ方法を公開します(分析〜選択編)
漢方薬の選び方に対するそもそもの間違い
漢方薬は『病名』とか『今の症状』に合わせて選ぶものではありません。
例えば、「頭痛があるから五苓散」とか「ニキビに十味敗毒湯」とか『症状、病名=漢方薬』ではなく『体質=漢方薬』で選びます。
また、漢方薬は症状を抑えるものではないので、頭痛とか湿疹を止める成分が含まれていたり、効果があったりはしません。
例え頭痛という1つの症状でも漢方では体全体を分析し体質を割り出し、体全体を治療するのですが、この分析する体質も合わせる漢方薬も飲む前は推測でしかないので、飲む前から治るかどうかは誰にもわからないのです。
ですので、できるだけ自分の体質に合ってそうな漢方薬の候補を出してきて、その中で一番、確率の高い漢方薬に行き当たるまで消去法で絞りこみます。
これを『鑑別』といいます。
大体、代表的な病気や症状を治す場合に候補になる漢方薬は40種類くらい。
その中から、自分に最も合う確率の高い漢方薬が1つになるまで、他の39種類を消去していくのが、本来の『漢方薬を選ぶ』ということになります。
「選ぶ」というよりも『合ってなさそうな漢方薬を消去する』と考える方が正しいですね。
では、その消去の手順を紹介します。
漢方薬を選ぶ方法
自分に合ってそうな漢方薬を選ぶために必要なのは、病院の診断名でも今悩んでいる症状でもありません。
『自分の体質は一体、何なのか?』ですね。
【1】 東洋医学的な問診から全身の状態を知る。
【2】 そもそも病院で診断されている病名が、本当にあっているのか、誤診されていないかを考える。
【3】 過去の病歴から体質の傾向を探る。
【4】 相談とは違う他の病気がある場合、他の病気から体質の傾向を探り、他の病気と一緒に治せるか?また治すべきか?を考える。
【5】 その病気や症状がいつから始まったのか?を聞いて病気の経過時間がどれくらい経っているを考える。
【6】 症状はどんな状況でひどくなったり、またマシになったりするのか?から症状の強さを考える。
【7】 その病気や症状で使われる可能性の高い代表的な漢方薬の候補をあげる。
(僕は1つの病気に対して40種類位を考えることが多いですが、候補になる漢方薬の種類は多ければ多いほど消去が大変になりますが治療精度は候補数に応じてあがります。)
【8】 体の場所的にどこが悪いかを考える。
【9】 六病位、気血水弁証、八綱弁証、五臓弁証という体質を分析する方法を用いて、病気や症状の原因(証)を分析する。
これらの分析方法はまた詳しく紹介していきたいと思います。
【10】 八法から治療方法を考える。
八法とは治療方法のことで、その原因に対して、どういった治療方法をとるのが最適なのかを考えます。
【11】 原因(証)と治療方法を組み合わせて、悩みの症状以外の症状も分析しながら、原因(証)と関係なさそうな漢方薬を消去していく。
(原因や全身の症状など総合的に分析しながら、候補の40種類の漢方薬の中から最後の1種類の漢方薬になるまで絞っていく)
【12】 複数の病気や症状がある場合は、すべての病気や症状が一度に治せるか(1種類の漢方薬で治せるか?)、複数の漢方薬が必要か?または段階的に順番に病気や症状を治していく必要があるかを考える。
※体質によって一度に治せるか、段階的な治療が必要かが分かれます。
【13】 飲んでもらった後の体の変化をみて、選んだ漢方薬が合っていたかどうかを考える。
一番、重要なのは13番です。
漢方薬は、飲んだ後の変化によって、その漢方薬が体質と合っていたかどうかを確認できます。
飲む前は、あくまで『合ってそうな確率の高い漢方薬』なので、飲んだ後に全身の変化を確認して、このまま漢方薬を飲み続けるのがよいのか、違う漢方薬に変更した方が良いのかを考えます。
ちなみにこの『体の変化の確認』では、かならずしも自分の気になっている症状から治ってくるとは限りません。
メインの症状が治る前段階として「夜中のオシッコがなくなる」とか「食欲が増してきた」とか、一見、病気や悩みの症状とは関係なさそうな症状や状態から治ることもあるので、あらかじめ、どの病気や症状が一番の悩みの病気や症状とつながっているのかを把握しておく必要があります。
漢方薬は症状を抑える成分はふくまれていませんし、そんな効果で治すのではないので、一番の悩みの症状だけを追いかけていては、いつまで経っても自分に合った漢方薬とは出会えません。
漢方薬の副作用の原因
これもよく誤解されている『漢方薬の副作用』を紹介します。
漢方薬の副作用は、『あなたの体質と漢方薬が合っていなかったら』発生します。
副作用の原因を細かくみていくと『分析した体質自体があっていない』『選んだ漢方薬があっていない』『分析した体質もあってないし、選んだ漢方薬もあってない』3つのパターンがあります。
副作用が出たら、他の漢方薬に変えればいいのですが、ややこしいことに『治っていく過程で副作用的な症状』が発生することもあります。
例えば、「血や水の巡りが活発になって、一時的に頭痛が強くなる」などです。
このまま、巡りがよくなっていけば4、5日もせずに頭痛は治っていくことが多いのですが、漢方薬の副作用が難儀なところは、その不快な症状が、『治る過程なのか?』『漢方薬と合っていない副作用からなのか?』がわからないところです。
ですので、こういった場合は、調べた体質や治療方法と照らし合わせて、そういった治り方は問題ないのかどうかを検討しないといけません。
「漢方薬は選んでしまえばあとは飲み続ければ終わり」ではなく、飲んだ後からが、本当の治療なのですね。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社
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