漢方医が実際に自分に合った漢方薬を選ぶ方法を公開します(分析〜選択編)
漢方薬を選ぶ方法って世間でめっちゃなめられています。
一番、なめているのが専門家のはずの医者。
ツムラなどの漢方薬メーカーから貰った西洋医学の病名に東洋医学の漢方薬を対応させている意味不明なマニュアルを見て漢方薬を選んでいます。
ひどい医者になると病院の薬のような臨床データ(何十人かに〇〇の漢方薬を使ったら血圧が下がったみたいな)を漢方薬を処方するデータでも使えると勘違いしてたりします。
漢方薬は一人一人の体質に合わせて選ぶ必要があるのに、十把一絡げにした西洋医学の病名で集めた人に同じ漢方薬を飲んでもらったから何のデータになるの?って話。
少なくとも漢方薬の治療とは何の関係もないです。
また、ネットで病名や漢方薬名を調べて、西洋医学の病名や症状が書いてあるから、その漢方薬で治るんじゃないかと思っている人もいますが、それって治るメカニズムや根拠って何です?
治るメカニズムがどこにも書かれていないでしょ?
単に漢方薬名と症状と病名が並んでいるだけなんですよね。
自分で簡単に選びたいのであれば、せめて『なぜ、その漢方薬で治せるのか?』
効果の根拠やメカニズムを探した方がいいですよ。(ないけど)
ということで前回から、僕は実際に漢方薬を選ぶ際にどんな方法をとっているのかを紹介しています。
前回は問診票を書いてもらったり、症状を確認する前の下準備編でした。
前回の話はコチラ→漢方医が実際に自分に合った漢方薬を選ぶ方法を公開します(下準備編)
今回は、いよいよ問診票の症状から体質をみていきます。
アトピーの患者さんを例にしてみましょう
例として登場してもらっている患者さんはうちの店で実際に治療したアトピーの二人です。
30代でアトピー歴は25年以上の女性。
20代でアトピー歴は1年の男性。
病院だと年齢、性別、湿疹の状態の差など関係なく、どちらも『アトピー』とざっくりくくって、ステロイド剤と抗ヒスタミン剤、そして漢方薬は、体質もクソもなくマニュアルで十味敗毒湯か消風散です。
なぜ、その漢方薬なのか?
医者にはそんなの関係ありません。
「そこに書いてあるから」
「そこに山があるから」くらいのノリですよ。
アトピーなどの湿疹の場合、実は重要なのは湿疹の状態です。
漢方薬を選ぶ際の誤解
漢方薬で一番、誤解されているのは『なんとなく効きそうな漢方薬を選べばいい』と考えていることが多いですが、実はこれが全く違います。
『実は漢方薬が体質と合っていてその病気を治してくれるかどうか』は飲んでみたその結果からしかわかりません。
まずは体質の状態、病気の原因を推測します。
「えーでも病名や症状が書いてあるじゃん!」
いや、西洋医学の病名は漢方薬とは関係ないし、症状は体質を分析するための参考情報なのです。
漢方では体内の状態を分析するのですが、体内の状態というのは当然、ブラックボックスで誰にもわかりません。
検査数値なんかも東洋医学の体質とは何の関係もないのです。
漢方では、血の巡りどうたらとか、水の巡りがどうたらとか、血の不足がどうたらこうたらという状態を推測していくのです。
だから、実際にどんな体質なのかは、その推測した状態に合わせた漢方薬を飲んでみないとわかりません。
しかも推測した体質が間違っていても、選んだ漢方薬が間違っていても答えは出ないのです。
あくまで推測した体質や原因が合っていて、選んだ漢方薬が合っていれば、『選んだ漢方薬が合っていた』と飲んだ後にわかるのです。
最初は、体質も最適な漢方薬もわからないので、候補となる漢方薬を全部、使う合う可能性があるかもしれないと考えて頭に思い浮かべます。
大体、どんな病気でも40種類くらいの漢方薬が使う可能性のある漢方薬の数です。
この40種類を分析しながら、1種類に絞る作業をしていきます。
体のどの場所が悪い?
湿疹では患部の外見の状態から、どんなタイプの湿疹のなのかをみていきます。
例えば、乾燥して出血しやすいボコボコ湿疹とか、乾燥はなく反対にジュクジュクしている湿疹とか、どっちもマーブルに混ざっているとか。
これはアトピーに限らず、ニキビ、蕁麻疹、貨幣状湿疹、尋常性乾癬やものもらい、ヘルペスなど外見に現れるものは同じように患部をみていきます。
乾燥タイプは、熱が強すぎたり、血の不足、皮膚が疲れきった代謝不足などの可能性があります。
じゅくじゅくのタイプは、水の巡りが悪かったり、腎の臓が弱かったり、皮膚表面の代謝が悪かったりなどが原因の可能性があります。
そしてマニュアル大好きなお医者さん、残念ですが現実は、紋切り型にどちらかではなく、これらが混じっています。
漢方では体の表面、体の裏(体内の深い部分)、体の半表半裏(表面と裏の間)、体の上部、胴体、下半身など体の場所によって漢方薬を使い分けますので、状態が混じっていても、漢方薬は選び分けることができます。
この時点で候補の40種類から関係がなさそうな漢方薬を除外していきます。
あなたの最適な1種類の漢方薬に近づきました。
体質や原因の調べ方
いよいよ、全身の症状をみながら体質や原因を分析します。
漢方薬ではどんな病気でも全身の症状を調べますが、この時に一つずつの症状があるかないかのチェックをするわけではありません。
気、血、水、寒、熱、燥、湿、虚、実という要因がどんな状態かを分析するために症状をチェックします。
例えば30代でアトピー歴は25年以上の女性は全身が乾燥しています。
そして、首に熱感があり寝る時も熱感が気になります。
昼寝などから目覚めると汗がどばーっと出てくる。
月経前に湿疹がひどくなったりする。
この場合、上焦という場所に病が集まりやすく、そこには不要な熱がこもっている。
汗がドバーっと出てくることから気の滞り(自律神経系)も見られる。
月経前の状態から血の巡りの悪さや肝の臓の悪さも考えられる。
といった具合に分析します。
さらに「頭痛がある」場合、のぼせと一緒に起こるのか?
とか、オシッコの回数や状態はどうなのか?など、他の症状と組み合わせて原因がどこにあるのかを分析します。
原因が気なのか?血なのか?熱なのか?冷えなのか?などなどを考えます。
実際は、どれか一つが原因ではなく「熱40%、気20%、燥20%、血15%、水5%」みたいな原因の配分になります。
一人一人全く違う原因
20代でアトピー歴は1年の男性は蕁麻疹のようなボワンとした湿疹がでます。
四六時中、湿疹があるわけではなく、運動をした後と朝方に湿疹が出てきます。
この方はさっきの方とは全く違うタイプですね。
この時点で症状を確認するまでもなく、水の巡りが原因ではないかと推測できます。
漠然とアトピーに効く漢方薬を選ぶのではなく、40種類の候補の漢方薬から、水の巡りを調整してくれるものを選んでいきます。
症状のチェックは、汗のかき方やむくみ、頭痛などが水の巡りを関わっていることもあります。
またこういった体質タイプは、便が軟便気味だったりと腸の水の巡りの影響もあったりするので、湿疹の状態と便を関連させてチェックしていったりする必要もあります。
結局、こうやってみていくと二人の共通点は、アトピー(正式には奇妙な湿疹という意味)というよくわからない診断が共通しているだけで、その他は、何一つ共通点もないし、なんだったら体質や原因は正反対。
当然、体質や原因が正反対ということは、当然、選ぶ漢方薬も正反対になります。
根本治療のできる漢方薬を選ぶために
とにかく一般的にみんな誤解しているのは、西洋医学の病名を当てはめて漢方薬を選ぶわけではありません。
漢方薬は有効成分がわかっているわけではなく、どう効くのかも決まっていません。
その証拠に効果や作用のメカニズムは処方した先生もボヤーンとしか説明できないはずです。
ちょっと勉強した人でもせいぜい『血を巡らせて治します』とそれっぽいことを説明しますが、それもよく考えたら、『血が巡ったからってなんで、湿疹やかゆみがなくなるの?』って話。
漢方薬は何かの不思議成分が、かゆみや湿疹、その他の症状をなんとなく治すわけではなく、普段、体の中でバランスをとっている要素を整えることによって根本的に治っていきます。
もう一つ重要なのは、漢方治療は漢方薬だけで治すのではなく、その人自身は悪いとは思っていない、実は体に悪い生活習慣などをその人の体質に合わせてアドバイスすることです。
これも医者は盛大に勘違いして一般的な健康法のアドバイスという漢方的には、一番、やっちゃダメなアドバイスをします。
漢方薬はまず、あなたの状態がどんな状態で原因は何なのか?を分析し推測します。
そして、その状態に対応できそうな漢方薬の候補を40種類以上、考えます。
そして、全身の状態や生活環境、生活習慣を更に詳しく検証しながら、40種類以上の候補の漢方薬の中から最適な1種類まで絞っていきます。
そして、大事なのは『漢方薬飲んでもらった後に選んだ漢方薬が合っているのか?分析した体質があっていたのか?』を患者さんと先生でじっくりと検討することです。
間違っても「本に書いてあるよ」なんてお花畑な選び方はしませんよ。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社
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- 漢方薬で治したい人は「証」(体質)を知らなければ治らない
- 日本で漢方薬を処方しているほとんどの先生が、実は体質なんて診断していません。これでは漢方薬は効果を発揮しません。