漢方医が実際に自分に合った漢方薬を選ぶ方法を公開します(下準備編)
タイトルがちょっと上から目線ですが、過去ブログでも今回と似たようなタイトルの記事を紹介していますが、僕が普段、具体的にどんな風に分析して、その人に合った漢方薬を選んでいるかを説明したいと思います。
というのも、みなさん、漢方薬を選ぶ方法をあまりに軽く見すぎているからです。
医学のいの字も知らない感じの人が、ネットでチャッチャッと検索して、病名や症状だけ当てはめて、自分で選んだりしています。
素人の方どころか、医者がツムラなどの漢方薬メーカーからもらったマニュアルの「めまい」の欄を見て、そこに苓桂朮甘湯って書いてあるからという理由だけで苓桂朮甘湯を出しています。
ちょっと冷静に考えてみてください。
漢方って4千年の歴史があり、歴代の皇帝の治療をしてきたのです。
今で言えば、宮内庁御用達の超エリート医師ですよ。
そんな人たちが「この本には、めまいに苓桂朮甘湯って書いてあるからコレ、きっと効きますよー♪」なんて誰でもできるような簡単で低レベルな方法で選んでたと思います?
そんな漢方医いたら、即刻死刑になっていますよ。
実際、皇帝専属の漢方医なんて命がけで治療していたと思います。
漢方医としての精密な分析と熟慮された治療戦略を持って、自分自身の考えで漢方薬を選んでいたのです。
ネットや本には漢方薬ごとに症状や西洋医学の病名が書かれているので、どうも、一般の素人の方も医者もその症状や病名を治してくれるものだと誤解していますが、漢方薬ごとに書いてある症状や西洋医学の病名は、それらを治す効果という意味ではないのです。
(あれは漢方薬を医薬品扱いにするために医療法上、仕方なくそうなっているだけ)
ということで、二人のアトピーの方を対象に漢方薬とは実際にどんな感じで選んでおくのかを説明していきたいと思います。
病名や症状はあくまで参考
漢方薬ごとに書いてある病名や症状は、あくまで参考情報です。
それらの病気や症状を治すという意味ではありません。
例えば苓桂朮甘湯の効能効果の欄に「めまい、ふらつき」などが書かれていますが、あれは、「めまいやふらつきを治す」という意味ではなく『めまいやふらつきのある人にも使うことがある』という意味で、体質や原因の違いで他にも40種類ほど、めまいやふらつきに使う漢方薬はあります。
なんだったら、全身の問診もとらず、体質も分析せずに苓桂朮甘湯と出された時は医者に実際にどんな効能効果、メカニズムで治るのか?
そのしくみを詳しく聞いてみてください。
きっと答えられないから、お医者さんお得意の”話をすり替え”をすると思います。
患者さんの紹介
では、アトピーの方、二人に登場してもらいましょう。
お一人は30代でアトピー歴は25年以上の人。
もう一人は20代でアトピー歴は1年の人。
ちなみにこの方々、どちらも皮膚科に行けば同じアトピーという病名で処方される薬も同じようなステロイド。
ついでに漢方薬を処方する場合は、どちらの人も体質もクソもなくザックリと「アトピー」というひとくくりの診断?をしてマニュアルをみて十味敗毒湯か消風散を処方するでしょう。
ようするに本来は年齢やら体質やらで治療も変わらないといけないはずですが、病院ではみんな同じ治療です。
体質別に治療するはずの漢方薬ですら医者は誰にでも同じ漢方薬を選びます。
最初にすること
では本来の漢方で、まず最初にすることは問診票を書いてもらうこと。
問診票というのは、病院で始めに「過去に薬でアレルギー反応が出たことがありますか?」とか「妊婦さんですか?」とか「どこがかゆいですか?」といった西洋医学のための問診ではありません。
漢方では『漢方薬を選ぶための問診』が必要となります。
ちなみにうちの問診票は、全身の状態を知るため50項目、250箇所のチェックが必要なものとなっています。
参考まで→まごころ漢方の体質判断表
問診票の重要な点
問診票の分析で重要なのは、頭痛があるとかないとか、胃もたれがあるとかないとか「症状のあるなし」よりも、『過去の病歴』や『他の病気』、『症状がいつから始まったか?』『症状はどんな状況でひどくなったりするか?』です。
漢方薬は病院の薬のように『症状を一時的に止める』わけではなく、『体内のバランスを調整して、結果的に症状をなくしていきます』。
『過去の病歴』は治っていたとしても、その病気から「体質の傾向」がわかります。
また『他の病気』は漢方薬は病院のように各科ごとに治していくわけではなく、あなたの『体』そのものを治してくので、他の病気は体内の状態を分析する手がかりとなります。
『症状がいつから始まったか?』は漢方薬を選ぶために絶対に知らないといけないことです。
もし、漢方薬を出してもらった先生が「いつから…」という質問がなければ、その先生、絶対に漢方薬のことをわかっていません。
なぜなら、漢方薬は、症状や状態の強さの度合いによって選ぶ漢方薬が変わるからです。
『症状はどんな状況でひどくなったりするか?』これも重要。
アトピーなら『特に夏にひどくなる場合』と『特に冬にひどくなる場合』では、全く違う漢方薬になります。
『アトピー』というざっくりとした謎情報(アトピー性皮膚炎とは奇妙な湿疹という意味)だけで十味敗毒湯や消風散を選ぶなんて、最早、詐欺レベルです。
医者がやっている漢方薬の選び方なんて、「下駄が裏返ったから明日は雨」レベルです。
(えっ若い人は下駄で天気予報を占うなんて知らない!?)
漢方薬は体質ごとに変わる
ではでは、さっきのアトピーの方に登場してもらいましょう。
30代でアトピー歴は25年以上の人。
実は女性です。
20代でアトピー歴は1年の人。
こちらは男性です。
女性と男性の違い。
これだけで選ぶ漢方薬は変わってきます。
そして、『アトピーがいつからか?』期間の違いで漢方薬は変わります。
アトピー歴、25年以上の人とアトピー歴1年の人で同じ漢方薬なわけないですよね。
そして、年齢も重要。
皮膚の代謝やらなんやら違います。
これも同じ漢方薬にならない理由になります。
問診票をみるまえに
問診を見る前に『使っている。もしくは使ってきた病院の薬』のチェックです。
病院の薬は、治すものではなく症状を一時的に誤魔化すだけの対症療法です。
ですので、アトピーの方ですとヘビーにステロイドを使ってきて、ステロイドをやめると薬でごまかしていない本来の自分の湿疹が現れてきます。
ここでも時間軸が重要で、ストロイドを長く使っていたり、強いステロイドに頼っているほど、本来のその人の湿疹がわからなくなっています。
漢方薬は『その人自身の治す力が発揮できるように手伝う薬』ですので、やめることができる薬ならやめて、その人の本来の状態を知る必要があります。
また「病院の薬がどれくらい体に影響しているのか?」を考えるのも重要。
薬は人工的にあなたの体質に影響を与えているので、その薬が自然体にどんな影響を与えていたかを分析する必要があります。
医者は誤診していないか?
誤診というか、大体の医者って、なんとなく知っている病名に当てはめているだけなことが多いです。
これ、勝手に言っているのではなく、僕も息子も嫁さんも実際にその『テキトー診断』を経験しています。
参考までに
→(1)死にかけた時に何も役に立たなかった医者と病院(病院編)
→(2)死にかけた時に何も役に立たなかった医者と病院(自宅療養編)
→(1)どこの病院も治せなかった拘縮の治療日記(病院治療編)
→(2)どこの病院も治せなかった拘縮の治療日記(漢方鍼灸治療編)
というか的確な診断だな、なんて感じたことがないので、実際にはどんな状態なのかを僕は自分自身でも分析します。
手術などが関わるような病気の場合は、外科医の師匠にどんな手術をするのか、予後の状態なども聞きます。
漢方は体全体の調子を分析しますので、『自分自身として西洋医学的にはどう捉えたか?』も重要です。
漢方薬は選ぶのではなく消去していく
まだまだ症状などの確認にいけませんよ。
でもここまでの分析がかなり重要です。
そして、これも盛大に誤解されていることですが、漢方薬というのは『良さそうなものを選ぶ』のではなく、なるべくたくさんの候補となる漢方薬を事前に出してきて、今度はそれを1つになるまで消去していくのです。
これを漢方では『鑑別』といいます。
何度も言ってますが、西洋医学の病名や症状を当てはめて漢方薬は選びません。
その人の体質(原因)に対して漢方薬を選びますが、その体質や原因って推測でしかないのです。
病院の検査結果があろうと、診断された病名があろうと漢方とは何の関係もないし、僕がこれだけ分析をしても、その人の体質や原因は推測でしかないのです。
その症状の原因、あなたの体質は、漢方薬を飲んだ後にわかること。
しかも、選んだ漢方薬で良くなった場合は、分析した体質や選んだ漢方薬が合っていたとわかるのであって、より悪くなったり、何も変化がなければ、分析した体質が間違っていたり、選んだ漢方薬が間違っていたり、その両方が間違っていたということになります。
これは『漢方治療の絶対の原則』です。
病名や症状は答えにならないので、初回は、あらゆる体質の可能性を考えないといけない。
つまり、『全ての漢方薬が治るかもしれない可能性がある』ということになります。
とは言っても、過去に特にアトピー関連の治療によく使ってきた漢方薬というものが先人の先生方が候補として出してくれます。
何百種類の漢方薬の中から40種類くらいまで絞ってくれています。
毎回、何百種類の漢方薬から選ばなくてもとりあえずは、アトピーでよく使われる40種類の漢方薬をテーブルに乗せます。
そして、いよいよ、その人の全身の症状や状態を分析しながら、40種類から1種類まで消去法で候補の漢方薬を消していって絞るわけです。
ネットで調べたら書いてあった1種類か2種類の漢方薬。
人それぞれの体質パターンが、そんな少ないわけないんですから、何かの病気を漢方薬で治す場合は、まずは使う可能性のある漢方薬を40種類は出せるようにしましょう。
2種類から絞った漢方薬と40種類から吟味し絞った漢方薬。
どっちが治してくれる可能性が高いと思います。
下準備編のまとめ
いわゆる、みなさんが漢方薬を選ぶ時に症状などをあてはめたりするのは、ここまでの下準備が終わってからです。
僕が普段から相談時にやっていることなので、記事1回でまとめられるかなと思いましたが、思いの外、下準備だけでかなりの長文になりましたので、自分に合った漢方薬を選ぶ方法の下準備編として、この辺りで締め括りたいと思います。
何度も言いますが、『東洋医学である漢方薬』は『西洋医学の病名や症状』にあてはめて選ぶのではありません。
『アトピーに効く漢方薬など、〇〇の病名に効く漢方薬』なんて存在しません。
その前にあなたの湿疹を起こしている体質や原因は何かを調べないといけないし、たまたま、調べたらヒットした漢方薬を使うわけではなく、あらかじめ、アトピーで使う可能性のある40種類の漢方薬をリストとして出して、そこから39種類を消去して、1種類だけに絞る作業が『あなたに最適な漢方薬を選ぶこと』になります。
次回、「漢方薬を選ぶ方法編」を書きます。
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◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社
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- 日本で漢方薬を処方しているほとんどの先生が、実は体質なんて診断していません。これでは漢方薬は効果を発揮しません。