漢方薬を選ぶ際に病名と症状はなぜ関係ないのか?
漢方薬といえば、「体質改善」とか「体質に合わせる」と言うイメージをなんとなく持っていると思うのですが、病院や漢方薬局が実際に漢方薬を選ぶ時は、どうやっているかご存知ですか?
実は実際は体質に合わせずに病名とか症状とかに合わせてマニュアル的に選んでいるのです。
例えば、めまいやメニエール(病名)に苓桂朮甘湯とか、頭痛(症状)に五苓散とか。
病名や症状がなんとなく「それも体質なんでしょ」的に思って飲んでいる人も多いんじゃないでしょうか?
当たり前ですが、病名や症状は体質のことではありません!
そもそも体質に合わせて漢方薬を選ばないといけないのに病名や症状で選んでいるってことは、『何もちゃんと考えずにテキトーに選んでいる』ことになっちゃうので、当然、良くなってくるわけがありません。
それでは、なぜ、病名や症状は漢方薬を選ぶことと関係がないのかを解説していきたいと思います。
(症状に関しては全くの無関係ではないですが)
病名から漢方薬を選ぶのが絶対に不可能な理由
そもそも、漢方薬を選ぶには証と呼ばれる『体質』を分析診断して選ぶのですが、こういった本来の方法って漢方薬が出現し始めた2000年前にはすでにありました。
当たり前ですが、漢方薬と漢方薬を選ぶ方法がセットになっていたのですね。
そして、今の病名って呼んでいるものは、西洋医学のもので、西洋医学で病名を決定して薬を選ぶ方法は、まだ200年も経っていません。
つまり、「病名」というものは漢方薬の時代から1800年以上経ってから現れているので、欧米などで発展してきた西洋医学の病名を元に、それよりも1800年も前の中国で発展してきた東洋医学の漢方薬を選ぶことは『不可能』なのです。
普通に考えて無茶苦茶なんですよね。
体質に合わせるとは?
漢方薬は体質に合わせて選びますが、じゃあ、体質って何なのよ?って話です。
体質とは東洋医学的な診断基準で分析した『病気の原因』や『現在の全身の状態』のことを指します。
東洋医学的な診断基準なので、気血水の巡りや冷えや熱の状態、乾燥状態、東洋医学的な臓器がどうなっているのかなどなど、『東洋医学の基準』で分析して、体質を診断します。
やっぱり、西洋医学の病名は何の関係もないのです。
病名は体質を現していない
下痢を頻繁に繰り返したりすると過敏性腸炎なんて病名が診断されたりします。
この人が卵巣嚢腫を持っていたら、卵巣嚢腫という病名も診断されます。
病名というのは実は体質を示していません。
単にある条件に引っ掛かれば、その病名がつくだけです。
ここで1つの罠があります。
体質というのはいうまでもなく、全身の状態のことですよね。
右腕だけの体質とか、左腕の体質は違う。とかだとおかしいですよね。
病院は体をバラバラの部品に見立てて各科(皮膚科とか眼科とか)それぞれで病名を決定しますので、つまりは体の部品の状態だけしか見ていません。
なので、病名がつけられると「自分の体全体がそんな病気なんだ」というイメージを持ちがちですが、実は部品的な問題を見ているだけなのです。
漢方薬で病名が通用しない理由
さっきの人が胃腸科にだけ言って、排卵時期や月経時期の痛みは我慢して婦人科に行かなければ、卵巣嚢腫という病名をつけられることはないので、過敏性腸炎だけが自分の問題だと考えてしまいます。
病院の治療とは、単に痛みや下痢などを一時的に抑えるものが多いので、部品的な問題がわかればそれでいいのです。
もっと極端に言えば、何の症状かがわかれば、その症状を抑えたりする薬を選ぶだけなので、病名すらあまり意味がなかったりします。
ところが、漢方薬は病名に対応しているわけではありません。
全身の状態を調べて『体質を診断』しないと漢方薬が選べないので、卵巣嚢腫に関わる排卵時期や月経時期の痛みも含め、全身の全部の状態を分析しないといけないのです。
ところが、この過敏性腸炎の人が男性の場合はどうでしょう?
当然、卵巣嚢腫はあり得ないですね。
例えば、過敏性腸炎という病名で『漢方薬を選んだ場合』、卵巣嚢腫がある女性も、それがない男性も同じ漢方薬で治るっておかしくないですか?
だったら、毎回、病院で体全部を調べて、
→『他にどの病気が隠れているのか?』
→『他にどれだけの病名があるのか?』
を全部調べ尽くして、全部の病気に漢方薬を当てはめていかないと体質的に治らないですよね。
結局、現状は一番、目立って気になっている病名に対して都合よく漢方薬を選んでいるだけなんですよ。
症状に合わせて漢方薬を選ぶ間違い
漢方薬を選ぶ際には病名や症状でなく、『証』と呼ばれる体質で選びます。
『証』は今の『病的な体質』とも言えるし、『症状や病気の原因』とも言えます。
本来の漢方薬の選び方は、過敏性腸炎と卵巣嚢腫という病気をなんとかしたい女性の場合、まずは全身の症状や状態を調べます。
月経痛はどんな感じかというところから、睡眠の質や肩こり、汗のかき方やオシッコや便など、文字通り全身の状態です。
そこから、気の状態、水の状態、血の状態や熱、冷え、漢方的臓器の状態、体力の状態、環境との兼ね合いなど総合的に調べて原因を調べます。
この時に症状が原因を追求していく際のヒントになりますが、ある症状に合わせて漢方薬を選ぶのではなく、『症状から原因を探る』のです。
漢方薬には病院の薬のような症状を抑える効果や成分などはないので、症状を元に漢方薬を選んでも何の意味もありません。
症状から、例えば、「胃腸を含む消化器系の脾の臓が弱って、水が溜まり、そこから下痢を起こし、それが下半身の水の巡りのバランスを崩し、卵巣の方の水の巡りも悪くなり、肝の臓の血の巡りの悪さも合わさって、嚢腫を引き起こしている」と考えます。
簡単な感じにしましたが、これが東洋医学的な病気の分析と考え方です。
漢方での病名や症状の役割
西洋医学での病名や症状は、漢方薬を選ぶ際には、実質は無関係なのですが、病名や症状をヒントにして、東洋医学的な体質(病気の原因)を探し出し、その体質に合わせて漢方薬を選びます。
では、なぜ、ほとんどの漢方薬局や東洋医学内科などの病院は、病名や症状だけを当てはめて、体質もみないで漢方薬を処方するようになったのでしょうか?
これにはいくつかの問題が隠されています。
それは次回にでもお話しできたらと思います。
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◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社
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