漢方薬相談ブログ

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)は結構、危険な薬

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)は結構、危険な薬

  1. 当たり前ですが、漢方薬は体質に合わせます
  2. 麻黄の効果と危険さ
  3. 附子の効果と危険さ
  4. 漢方薬の強い効果は強い副作用にもなる

今更、医者が漢方薬を選ぶ時の簡単マニュアル処方の方法には、驚きませんが、うちの患者さんから、花粉症で診察に行った時に、一切、体質を判断するための問診もされずに麻黄附子細辛湯をずっと処方されていたという話を聞きました。

先日もこちらの記事「名医20人が自分で買って飲んでいる「市販薬」実名リストを公開!」(記事の医者の意見にもツッコミどころ満載ですが、それは後日)で、『風邪には葛根湯(1番)や麻黄附子細辛湯(ツムラなら127番)を薦める医師がいる』と書いてありました。

記事の内容からして、明らかに体質分析なんてどこ吹く風で風邪という病名だけで、マニュアル的に葛根湯や麻黄附子細辛湯を薦めているみたいです。

もちろん、漢方薬は、いろいろな体質のタイプを持った人に合わせて処方しますので、花粉症に麻黄附子細辛湯や風邪に麻黄附子細辛湯というのは、あり得ないわけではありません。

問題は、何十種類もある花粉症や風邪で使うとされている漢方薬の中から選ぼうとしないで、患者さんの体質を診る前から、花粉症に麻黄附子細辛湯、風邪に麻黄附子細辛湯とマニュアルで決めていることなのです。

当たり前ですが、漢方薬は体質に合わせます

ちなみに花粉症だと、この辺の漢方薬の中から体質に合うものを選びます。

【花粉症でよく使用される漢方薬】
大青竜湯、桂枝湯、桂麻各半湯、桂枝二麻黄一湯、麻黄二桂枝一湯、麻黄湯、葛根湯、小青龍湯、桂枝湯、麻杏薏甘湯、五苓散、薏苡仁湯、防已黄耆湯、苓甘姜味辛夏仁湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、麻黄附子細辛湯、甘草附子湯、茯苓四逆湯、麻杏甘石湯、五虎湯、越婢加朮湯、清鼻湯、神秘湯、麦門冬湯、小建中湯、十全大補湯、平胃散、小半夏加茯苓湯、二陳湯、人参湯、黄連解毒湯、辛夷清肺湯、桔梗湯、荊芥連翹湯、十味敗毒湯、柴胡桂枝湯、加味逍遥散、逍遥散、当帰芍薬散、大黄甘草湯

『花粉症だったら、葛根湯か麻黄附子細辛湯でいいんじゃね?』バカみたいなノリで処方するのではなく、上の漢方薬の中から、その人の体質をこれでもか!と分析し倒して今の体質に合いそうなものを選びます。

病名や症状に合わせて選ぶわけじゃありません

この中に葛根湯も麻黄附子細辛湯も入っていますが、40種類のうちの、たった2つなのです。

もう1回言っとこう、たった2つ!

漢方薬は体質に合わせるので、花粉症を持っている体質は40種類にもわかれるのです。

当たり前ですよね。

単純に『花粉症で慢性的な耳鳴りがある』『花粉症で喘息がある』だけで体質は全く変わってくるのですから、花粉症というたった1個の状態に合わせて「葛根湯だ」「麻黄附子細辛湯だ」というのは、漢方の世界では、あり得ないッ!!わけです。

すみません。医者が、あまりにもテキトーな処方をしているので熱くなってしまいました。

本題に戻ります。

要は花粉症や風邪に麻黄附子細辛湯とは限らないということです。

そして、漢方薬の副作用は、体質と漢方薬が合っていなければ、副作用となります。

そして、長い間、体質と合っていない漢方薬だと知らずに飲み続けると、その病的体質が定着します。

でも、これだけだったら、全部の漢方薬にも危険リスクがあるわけです。

普通のどの漢方薬でも体質と合っていない場合の副作用の危険があるのに『麻黄附子細辛湯の危険さ』は、これだけではありません。

麻黄の効果と危険さ

麻黄附子細辛湯に限らず、漢方薬では要注意!の漢方薬や生薬があります。

それが、麻黄附子です。

あと、いろいろありますが、特に警戒しないといけないのは防風通聖散などに含まれる大黄です。

大黄に関しては、また今度にでも書いてみたいと思います。

これまた、医者はインフルエンザには麻黄湯ですよなんてお気楽マニュアルなことをよくいってますが、麻黄が含まれる漢方薬は、僕ら専門家からすると、『果たして、本当に処方してよいのかどうか』慎重慎重に考えないといけない処方です。

なぜなのか?

それは、麻黄の特性にあります。

麻黄は成分的にはエフェドリンという覚せい剤の原料になるものが含まれています。

基本的に漢方は化学的成分とは関係ないですが、これもおぼえておいてください。

それよりも、麻黄は薬性が非常にきついです。

麻黄の効果は『性は温、辛苦、発表解表、表の利水、平喘』です。

この中の『発表解表』というのは、汗と気を発散させるというもの。

『表の利水』とは、皮膚表面の水の巡りを整えます。

これだけだと、「良い効果があるだけじゃん」という感じですが、漢方薬の生薬には強さ、弱さがあります。

例えば、『発表解表』の効果は、他にも「桂枝」や「葛根」にもありますが、『麻黄』はそれらに比べて断然、強い!のです。

で、強いと何がダメなのかというと『汗を出させる』という効果が『脱汗』になり、利水効果も強く、こちらと結びつくと、ただの『脱水』という病気になります。

危険さは、まだまだ、ありますよ。

この『発表解表』の効果は、汗だけでなく、発散させる効果なので、蕁麻疹や湿疹などを『爆発』させたりすることもあります。

実際、アトピーの方なんかは、『葛根湯』『麻黄がつく名前の漢方薬』で湿疹が爆発した経験が多いと思います。

更に麻黄が合わない体質の場合は、胃を荒らします。

麻黄附子細辛湯は、麻黄だけでなく附子もありますね。これもまた要注意!

次に附子の危険さを説明しますよ。

附子の効果と危険さ

附子の危険さは、一言でわかりやすく表せます。

附子とは猛毒のトリカブトのことです。

はい、これで危険さがわかりますね。

もちろん、これだけではありません。

附子の効果は『性は大熱、大辛、回陽救逆、温脾腎、散寒止痛』そして、『有毒』設定です。

トリカブトですから、そりゃ有毒ってなりますよね。

回陽救逆というのは心不全などで人事不肖に陥っている人に強い強心作用で助けます。

一見、効果が高そうに思いますが、心臓が元気な人に心臓に電気ショックを与えるようなものです。逆に止まります。

良くて動悸。

毒をなぜ、使うかというと、強烈なひどい状態に対しては強烈な作用で治すからです。

体質の悪さが強烈な状態だったら、強烈な漢方薬は薬になり、強烈な状態でなければ『毒』になります。

そして、まだまだ難儀な点がありますよ。

大熱という効果です。

附子は氷のように冷たい冷えを強烈な熱で治してくれます。

これも、氷状態までいってない普通の冷えの人だったら、附子によって、不用な熱が体内にこもってしまいます。

凍傷の人にちょうど良いお湯なんて役立ちません。熱湯クラスが必要です、でも今日はちょっと冷えているって言う人に熱湯いります?

附子には強い鎮痛作用があるので、痛み止めと勘違いしている先生がいますが、あくまで『強い冷えからくる痛み』に対しての効果です。

危険でもあるし、効果が強すぎて、処方する側の人間からするとあまりに効果と副作用が隣り合わせなので非常に読みづらいのですね。

漢方薬の強い効果は強い副作用にもなる

漢方薬は、標準的には8つほどの生薬で構成されています。

多いものになると24種類くらいで構成されます。

そして、漢方薬は、中の構成生薬数が少なくなるほど、作用が強烈になっていきます。

しつこいですが、『漢方薬の場合は、作用が強烈になると良いわけではありません!』

なぜなら、体質と合わなければ、副作用も効果に比例するように強烈になるからです。

麻黄附子細辛湯は、麻黄、附子、細辛という生薬で構成されています。

全部、徹底して熱をいれて温めるもの。

なので、風邪でも、よほどの冷えからくる以外は滅多と使いません。

つまり、専門で治療をしている僕からみても合う体質の人は滅多といないのです。

むしろ、無知で怖さを知らないからよく処方できるとも言えますが。

麻黄附子細辛湯を使うまでもなく、使いやすい漢方薬なんて何種類もあります。

また、花粉症なんて、だいたいが上半身に熱がこもって起こります。

不用な熱がこもっているところに更に強い熱をいれるなんて、暖房、ガンガンにかけて、のぼせたところに、石油ストーブをたいて、鼻血を出させるようなものです。

医者の漢方薬の病名マニュアル処方をみていると、無知って、のー天気に治療ができそうなので、ある意味、気楽でいいなと思う時があります。

漢方薬を東洋医学の医学理論で分析した体質で選ばずに、医者がやっているような病名や症状だけでしか選んでいない場合は、いつのまにか、よくわからない病気や体質になっているかもしれないですよ。

病院の漢方薬というか、それを選ぶ医者の能力は、本当に見極めたほうがいいです。

ちなみに、僕の専門能力からして今のところ、東洋医学的に体質を分析できる医者には一人も会ったことがありません。

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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅡ:薬局新聞社刊
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅢ:薬局新聞社刊

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

ブログの著者 国際中医師 松村直哉

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