病院にも溢れているニセモノ漢方医に騙されない知識
漢方薬を飲まれる機会が多くなっていますが、漢方は非常に誤解されていて、漢方薬を処方している医者や漢方専門薬局で処方している先生ですら、漢方の医学理論や哲学のことをよくわかってなかったりします。
つまり、漢方っぽいところに相談にいっても、そのほとんどが、『実はよくわかってない先生がよくわからないまま漢方薬を扱っている』なんてところが、ゴロゴロとあるわけです。
そうなるとどうなるかというと、単に漢方薬を飲んでいるだけで、とてもじゃないけど治るようなレベルじゃない単なる漢方体験だけで終わっている可能性が高いのです。
今回の記事では、最低限、漢方とはどんなものなのか?を知ることによって、ニセモノなんちゃって漢方医を見分けることができるようになります。
漢方治療と西洋医学の治療は全く違うもの
漢方と西洋医学は医学が発生した場所と時代が全く違います。
【漢方(東洋医学)】:漢方は2千年前から中国で行われてきた医学です。
【西洋医学】:ヨーロッパやアメリカで行われてきた医学です。
今のような薬を飲むことによって治す方法は2百年位前から行われています。
(詳しくはこちらの「漢方の歴史(漢方治療の古典の本編)」をお読みください。)
余談ですが、漢方とは、中国医学のことを日本側から見た時の名称です。(漢の国の方法)
ですので、中国では漢方とはよびません。
漢方と西洋医学の発生した場所と年代の違うことが、何に関係するかというと、実は漢方薬で治るか治らないかに関わってきます。
現在、ほとんどの保険適応の漢方薬を処方している医者や大半の漢方薬局の先生は、西洋医学の病名や症状を当てはめて、漢方薬を選んでいますが、西洋医学と漢方は場所も時代も何の接点もないので、医者が病名や症状を当てはめて、漢方薬を選ぶ方法は本来の漢方の世界には存在しない方法なわけで、それは間違った方法です。
(※漢方薬を西洋薬と同じ医薬品の区分にしたので、まるで病名や症状に対して直接、効果があるような表現になってしまっている)
しかし、当人達は、それがおかしいとすら気づかずに処方しています。
本来は、保険適応の漢方薬を販売している某漢方薬メーカーが、しっかり指導するべきなのですが、そういったメーカーははWebサイトなどでは建前的に「漢方薬は体質(証)に合わせて選ぶもの」と説明していますが、実際の医療の現場では、体質を分析せずに病名や症状だけあてはめてマニュアルで漢方薬を選んでいる状況をわかっていながら、そんないいかげんな医師達を放置しているかのようにしかみえない対応をしています。
(詳しくはこちらの「ツムラが自ら告白!?医者はまじめに漢方薬を処方していない」をお読みください。)
これらのメーカーは漢方薬を扱っている医師向けに漢方の勉強会を行っているので、企業的には、「しっかり、体質を分析、診断して漢方薬を選べるよう教育している」という建前がありますが、某有名漢方薬メーカーの勉強会などは、結局、名前の通っている医師が講演者となって「ニキビやアトピーには十味敗毒湯が効きます」など、いい加減なマニュアル指導をしていたり、漢方の歴史や漢方の生理学的なことは勉強しますが、具体的に体質を分析する方法や漢方の治療方針の立て方や漢方薬の効果を確認していく方法は、勉強していません。
(医師向けの漢方薬の勉強会に実際に出席した経験からの分析です)
そんないい加減な勉強会でも、漢方のことをなんとなく話せる程度にはなれますが、治療で必要な体質診断や漢方の治療方針を自分自身で考えることはできないため、『西洋医学の病名や症状だけをあてはめて漢方薬を処方する』という簡易的でデタラメなマニュアル方法が医師の漢方の世界やサプリの好きな漢方薬局では常識化しています。
(詳しくは、こちらの「ツムラが国民を欺いた!!漢方の「大嘘」について」をお読みください。)
漢方の体質とは?
体質というのは、病気やいくつかの症状のことではありません。
イメージしてみてください。
漢方は2千年前、皇帝、御用達の医学だったわけです。
そんな医学が、『皇帝、あなたの2、3個の症状が、あてはまったから、この漢方薬が合うと思いますよ』なんて、軽いノリのものだと思われますか?
国家から選出された専門家が本当に、そんな単純で簡単なことをやっていたら、即、殺されています。
そもそも「じゃあ、体質ってなんだよ?」ってなりますよね。
今、病院やネットで、「病名や症状があてはまるから治りそう」だと漢方薬を飲んでいる方法は、お試しや遊びレベルで『治療のレベルではない』ということです。
体質とは、病的な体全体のこと、病気や症状の原因のことです。
『全身の症状』『体格』『体力の程度』『生活環境』『生活リズム』『精神状態』など、すべてを総合的に分析して、体質を判断します。
いわば漢方は全身や取り巻く環境もふくめて分析していく総合診療みたいなものなので、皮膚科とか胃腸内科など、「科目」にわかれているところが漢方薬を扱うこと自体が異常なのです。
扱うなら最低限、『総合診療科』にするべきです。
(詳しくはこちらの「病院の漢方薬の効果を感じられない理由(「科」の問題 )」をお読みください。)
漢方が考える症状とは
西洋医学の薬は対症療法といって、症状そのものを薬の成分で、一時的に抑えることが目的です。
漢方の場合は、症状を何かの成分で抑えることが目的ではありません。
また、漢方薬に何か特定の症状を抑える成分は含まれていません。
漢方では、『症状』とは、体内の臓器と臓器の連携や血や水の巡りなど、体内の健康を維持するシステムが、不調になった結果、その不調を知らせるために出てきた警告のような現象として考えます。
西洋医学では、症状を抑えることを治療とよびますが、そもそも漢方では単なる警告ランプが点灯しているだけなのです。
最終的に体内の状態が整えば、警告として知らせていた症状はなくなりますが、漢方では『症状を直接、抑えることが目的ではない』ということです。
(詳しくはこちらの「自分の症状をあてはめていけば効果のある漢方薬を選べるのか?」)をお読みください。)
漢方的な具体的な体質の例
体質は一人一人、違います。
漢方で診断していくのは、西洋医学の病名でもなければ、2、3個の症状を聞きだすことでもありません。
症状やその他のことを全部ひっくるめて、体内を漢方的にみた時にどんな風に不調になっているのかを分析することです。
この体内の不調を『証』とよびます。
『漢方的な病気的な体質』のことですね。
(詳しくは「漢方薬で治したい人は「証」を知らなければ治らない」をお読みください。)
そして『証』は、1つとは限りません。
例えば、うちのある患者さんのパターンだと、PMSがあり、のぼせやすく、肩こりがあり、花粉症がひどく、胸の痛み、吐き気、めまい、足の冷え、夜中にオシッコにいく、スポーツが苦手で、体力がないという人の場合、体の上部に不要な熱がこもっている『上焦の熱証』に胸あたりに熱と気が滞る『胸脇の熱証』それと下半身に不要な水がたまる『下焦の水滞証』があることがわかります。
漢方的な病気の要素としては『上焦の熱証』『胸脇の熱証』『下焦の水滞証』の3つがあることになりますね。
そして本来の漢方の診断の場合は、この病的要素だけで漢方薬を選びません。
なぜなら、この3つの証を治す漢方薬は、似たようなものが何十種類もあるからです。
ここから、『症状はいつからあったのか?』など病歴の長さや『それぞれの証がどれくらい強いか』、『それぞれの証がどらくらいの割合で組み合わさっているのか?』例えば、『上焦の熱証が20%』『胸脇の熱証が50%』『下焦の水滞証が30%』などを考え、これらに合致する、より治療精度の高い、漢方薬を選びます。
「PMSで手足が冷えるのであれば、当帰芍薬散」なんて、そんな無知な人でもできる医学ではありません。
例えば、冷えに関しては、「手は冷えるけれど、足は冷えない」「足は冷えるけれど、手は冷えない」などで、選ぶ漢方薬が変わってきますので、冷えという症状1つとっても、細かく問診をとる必要があります。
漢方薬は、なぜ体質に合わせないといけないのか?
漢方薬は、何かの有効成分が都合よく症状を抑えてくれるわけではありません。
単純にみれば、冷えている人には、温める漢方薬を、余分な熱がこもっている人には、冷やす漢方薬を選びます。
そして、これを選び間違えて、冷えている人に冷やす漢方薬を選ぶと誤治壊病といって、副作用を起こします。
「冷えている人に、冷やす漢方薬なんて選ぶわけない!」と思われるかもしれませんが、これはあくまで単純化した例で、実際は、先ほどの人のように体の部位や時期などによって、冷えているところや熱がこもっているところなど違ってきて複雑になっています。
当然、漢方薬も「温めるだけ」とか「冷やすだけ」の効果ではなく、『下半身は温めるけど、肩から上は冷やす効果』など、非常に複雑です。
実際は、漢方の体質を判断する知識や漢方薬の効果の知識、漢方の生理学の知識がないと判断できません。
また漢方の副作用の怖いところは、体質に合っていないと気付かずに飲み続けると『おかしな体質が定着すること』です。
「体調がおかしかったら、さすがに気づくでしょ」と思われるかもしれません。
しかし、医者や知識の少ない漢方薬局の先生などは、そもそも全身の状態をみていないので、例えば、当帰芍薬散が合わないと胃腸を壊し、のぼせが発生しますが、足がぬくもったりしていると、効果があったと考えて、同時に発生した胃のトラブルやのぼせは、漢方薬のせいではなく他の原因で起こっていると医者も患者さんも勘違いします。
そうすると胃のトラブルに胃腸薬を追加で飲まされたり、のぼせを調べるためにホルモン検査をしたりと、まるで見当違いのことをしてしまい、合っていない漢方薬を延々と続けることになります。
(詳しくはこちらの漢方薬の副作用が病院の薬より怖い理由をお読みください。)
医者やダイエットやサプリ大好きの漢方薬局で病名や症状だけあてはめて、全身の体質を細かく分析しない漢方薬の処方された場合、それは最早、治療レベルではありませんので、お気をつけください。
よけいに持病がややこしくなっている可能性がありますよ。
漢方薬の治療をお考えの方は、漢方の治療とはどんなものかをちゃんと意識して、相談されるといいと思います。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ 漢方概論:創元社
◯ 漢方方意ノート:創元社
◯ 漢方臨床ノート(論考編):創元社
◯ 金匱要略ハンドブック:医道の日本社
◯ 傷寒論ハンドブック:医道の日本社
◯ 素問:たにぐち書店
◯ 漢方治療の方証吟味:創元社
◯ 中医診断学ノート:東洋学術出版社
◯ 図説東洋医学:学研
◯ 中国医学の秘密:講談社
◯ 陰陽五行説:薬業時報社
◯ まんが漢方入門:医道の日本社
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