ワクチンの副反応に効く漢方薬…なんてないですから
最近、コロナワクチンに関して奇妙な質問がありました。
「コロナワクチンの副反応に葛根湯が効くのですか?」
結論からいうとデタラメです。
この情報、どうも出どころは医者らしく、とにかく医者は漢方に関してはデタラメが大好き!
今までも漢方に関してはデタラメばっかりですが、今回のは特に酷いと思います。
漢方って医者も漢方薬局の先生もまともに勉強する人がほとんどいないから、デマが間違っていないかのように一人歩きすることが多いのです。
当然、いつものパターンでなぜ、これらがデタラメなのかを理論的に説明していきたいと思います。
葛根湯がコロナワクチンの副反応に良い?
「コロナワクチンの副反応に葛根湯が効くのですか?」という質問ですが、これの内容、厳密にはコロナワクチンの副反応に「麻黄」が効くから、麻黄の入っている葛根湯をジャンジャン飲めばいい!という話らしいです。
ツッコミどころ満載すぎてもう笑えるのですが、そもそもなぜ、「麻黄」が効くなら「麻黄」単体か、「麻黄湯」じゃないのかがよくわかりません。
「麻黄」が入っている漢方薬が良いのなら、葛根湯に限らず、さっきの麻黄湯、越婢加朮湯、麻杏薏甘湯やら、いくらでも麻黄が入っている漢方薬があります。
他ならなぜダメなのか?
更に医者お得意のボケが連発。
葛根湯って確かに麻黄が入ってますが、『葛根湯』って言うくらいだから葛根湯の効果のメインは「葛根」なんですよ(恥ずかしいからこんな当たり前のこと言わせんな)
僕の予想ですが、多分、『インフルエンザに麻黄湯』って医者が大好きなデタラメマニュアルがあるのですが、これを勘違いして『麻黄が効く』なんてことになったのかな?と思います。
ただ、それが何で葛根湯になったのか意味不明。
元々、医者の漢方薬の考え方はデタラメな上に意味不明なので、なんとも奇妙な思考過程があるのでしょう。
それでは、なぜ麻黄(葛根湯)はコロナワクチンの副作用に効くものじゃないと言えるのでしょう。
葛根湯が効くなら副反応の原因は?
漢方っていうと化学的効果ではなく、学問的にも非常に難解(そもそもまともな教科書になる本すら見当たらない)なので、医者も一般の方々も『漢方薬って何か不思議効果で体質を治してくれるみたい』みたいなファンタジー世界の薬だと思っている人が多いです。
当然、そんなことはなく漢方薬も理論的効果があります。
ですので、まず麻黄が効くというのであれば、その前に『コロナワクチンの副反応がなぜ起こるのか?』が明確にわかっていないとダメですが、当然、世界中で誰もわかっていません。(本来の臨床試験をすっ飛ばして言わば、今が副反応の原因を探る人体実験中みたいなものなので)
おまけに副反応だって「全然熱が出ない人」とか、反対に「高熱が出る人」とか「動悸が続く人」とか、僕のように医療系の相談の仕事をしていたらワクチンの副反応って熱だけでなく、人によって本当に色々な症状が出ていることがわかります。
「副反応の原因はわからない」、「人それぞれ症状も違う」だけど「葛根湯が効く」と思います?
おかしいですよね。
漢方の医学理論以前に理論的思考が崩壊しています。
こう言っては何ですが、こんな理論的な考えが出来ないのであれば、漢方以前に西洋医学の治療もやめたほうがいいです。
思考力が低すぎて患者さんがかわいそう…
漢方薬にもちゃんと理論的効果がある
医者も含めて『漢方薬は漢方薬の適応欄に書いてある症状をよくわからない効果で治してくれる』とフワ〜と考えている人が多いですが、そんないい加減なものではありません。
確かに漢方薬は科学的ではないですが、そこには治療理論があります。
まず、漢方治療の大原則は『体質に合わせる』ということ。
ごく単純に例えれば、『冷えている人には温める漢方薬』を選びます。
これを例えば人参湯の適応欄に手足の冷えという症状が書いてあるから、これを温めて治してくれると勝手に勘違いする人が多いです。
ところが、実際は『冷えている人』にもいろいろな体質や原因があって、単純に「手足が冷えるから冷えている人」とは限りません。
「手も足も年中、冷えてしもやけもできる人」、「手足は冷えるけど真冬だけしか冷えない人」、「足は冷えるけど手は冷えず、のぼせて汗が大量に出る人」、「ストレスを受けると極端に冷える人」、変わったところになると「胃が冷えると足が冷えるなんて人」もいたり、「冷えている人」も人によって原因が様々で、漢方はこれらの原因の違いによって選ぶ漢方薬も変わります。
つまり、『その人の状態がどんな状態』で、『その状態がどんな原因なのか』を調べて、『その原因を治せそうな漢方薬』を選ばないと治りません。
例えば、風邪には麻黄湯、葛根湯、越婢加朮湯、桂麻各半湯、桂枝ニ麻黄湯、桂枝湯、桂枝人参湯、人参湯、柴胡桂枝湯などを主に使いますが、風邪ならどれを使ってもよいのではなく、その時の体質(状態)に合わせて最適な漢方薬を選びます。
だからインフルエンザに麻黄湯なんてマニュアルはデタラメなのです。
なぜならインフルエンザや風邪は病気の総称であって、その人の体質(状態)を表しているではわけではないからです。
副反応の原因が分からなくても確かに漢方薬は選べますが、少なくともその人の体質(状態)に葛根湯が合うのかどうかは、その人自身の全身の状態を調べていかないと本当に合うのかどうかがわかりません。
副反応の熱などを風邪的な症状として捉えて治すにもしても、先ほどの9種類の漢方薬の中かから、どれが最適かを選ばないといけないのです。
漢方の世界に誰にでも同じように効く漢方薬なんてものは存在しません。
冷えている人に冷やす漢方薬を与えると当然、病気はひどくなります。
漢方薬は「なんとなく治す」のではなく『今の状態を調整できる変化を与えて』治します。
ですので逆に誰にでも飲めるのであれば、それは誰にも変化を与えないので、誰にも効かない薬になります。
なぜ、医者がこんなデタラメを言うのか?
今回の葛根湯に限らず、インフルエンザに麻黄湯も同じようなものです。
よく「〇〇病に効く、なんとか漢方薬」みたいな話が出てきます。
とにかく医者やほとんどの漢方薬局の先生は、体質を分析しないで西洋医学の病名や症状だけを当てはめて東洋医学の漢方薬を選ぼうとしますが、西洋医学と東洋医学は何の関係もないので、こんなおかしな方法はないわけです。
(いわばサッカーのルールで野球するみたいな奇妙さ)
西洋医学には西洋医学の治療や薬の考え方があり、漢方には漢方の治療や薬の考え方があるのです。
漢方薬は例え、頭痛という1つの症状でも原因を分析するためにかならず全身の症状や状態を調べます。
これを『証を立てる』といい、病気や症状の原因を推測し、その原因をどういった方法で治療していくのか『治療方針』を立てて、漢方薬を選びます。
(うちの相談ではかならず現在の証(体質と原因)と治療方針を提案します)
ところが、漢方の世界では体質を分析していく方法や治療方針を立てていくノウハウを明確に記した本はありません。
何冊もの漢方の本の中からチョコチョコと拾いとって、自分の経験に照らし合わせながら、分析方法を組み上げていかないといけないのです。
となるとなんでもマニュアル暗記だけの日本の教育では当然、身につけることが困難になります。
実際、医大や薬大ではほとんど漢方のことは学びませんし、学んだとしても「麻黄にはエフェドリンという化学物質が含まれる」などの治療と何の関係もないことをさわり程度にしか学びません。
漢方薬を販売することができても、実は使いこなすことができないのです。
だからツムラなどの漢方薬メーカーさんは症状や病名だけ当てはめれば漢方薬を選べるマニュアルを渡して(医者が持っている漢方薬の名前が並んでいるシートを見たことあるでしょ)、症状だけ聞いて選べるようにしたのです。
それがこじれて、多分、医者お得意の裸の王様スキルを発揮して、漢方のことを知ったふうにうまく勘違いすることによって、こんなデタラメを堂々と言うようになってしまったのかなと思います。
理由はどうあれ、今回のような「特定の病気や症状に効く、ある漢方薬がある」と説明する先生は「実は体質を分析できないし漢方薬を治療としては使いこなせない」と自白しているようなものなので、そんな先生の漢方薬は飲まないほうがよいです。
漢方薬の副作用のほうが怖いですよ。
ちなみに『コロナに効く漢方薬』とか『コロナに効く生薬』なんて話がちょこちょこ出てきますが、これもデタラメです。
コロナを漢方薬で治すことはできますが、『漢方薬の治療原則』から、どの人のコロナにも効く共通の漢方薬なんて存在しません。
その人の状況を調べて、その状態や体質に合わせて、自然治癒力をサポートしてコロナに打ち克てるように持っていくのですね。
※コロナ患者さんを漢方薬飲みで治療した経験がありますが、既存の患者さんとその同居人以外の方の相談は受付けていません。
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【引用先及び参考図書・Webサイト】
◯ ツムラ医療用漢方製剤マニュアル
◯ オースギ医療用漢方製剤マニュアル
◯ 漢方方意辞典:緑書房
◯ 漢方診療医典:南山堂
◯ 類聚方広義解説:創元社
◯ 勿誤薬室方函:創元社
◯ 漢方処方応用の実際:南山堂
◯ 中医処方解説:神戸中医学研究会
◯ 漢薬の臨床応用:神戸中医学研究会
◯ 近代漢方薬ハンドブックⅠⅡⅢ:薬局新聞社刊
◯ 平成薬証論:メディカルユーコン
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